にゃんこ擬人化

「ジタン！」
　明るい声が響き、お日様のような瞳の少年が駆けてくる。
「どうしたんだい、ダヤン」
　ちょっと立ち止まって半身になり、真っ黒な髪の凛々しい青年が振り向く。
　わずかに微笑んでいるが、どこか人を寄せ付けない印象がある。
　その印象は両腕に抱えた買い物袋、という庶民的かつ日常的アイテムでも相殺されない。
　そんなことを全く意に介せず、ダヤンはジタンに抱きつかんばかりの勢いで飛びつく。
「リーマちゃんから手紙が来たんだ！」
　確かに、彼の手には大事そうにかわいらしいピンク色の封筒が握られている。
　おっきな瞳を更にまん丸にして、ダヤンは顔中でにこにこ笑いながらジタンに手紙を差し出した。
「良かったね、読んであげるからうちにおいでよ」
　さっきよりも少し笑みを深くしたジタンと連れだって歩き出すダヤン。
　ジタンの抱えている紙袋から漂う、甘酸っぱいオレンジの芳香が鼻をくすぐる。
　その香りはまるでダヤンのようで、ジタンは紙袋で顔を隠してちょっと笑った。