色々
2011/11/13/Sun
兄の、つい先刻兄だと分かった人の、取り乱した声が闇夜を裂く。
切れ切れに聞こえる言葉に、ああ、父は腹を切ったのだと悟る。
薄々、父がそのような事をするのではないかと、私は気づいていたのかも知れない。
家を飛び出した父の硬い横顔が目の前をよぎる。
今、父はどのような顔をしているのだろう。
今すぐにでも駆け出そうとする我が身を押さえ付けるのは、ひどく困難なことだった。
闇を払うように、兄が高らかに告げる。
「九州相良」
「九州相良」
この言葉を聞くために、父は。
「九州相良」
手の先すら見えない闇の中、兄と眼があった気がした。
まだ暖かい骸を抱きしめると、後から後から涙が溢れてきた。
もう後戻りは出来ない。
遊女・瀬川は捨てた。
父が死んだ事で、娘のお米も死んだ。
もう後は夫と手を取り、ひたすらに敵を追いかけるのみだ。
九州相良。
九州相良。
父よ、兄よ。
無駄にはしません。
父の今際の言葉が我知らず零れ出た。
「なんまいだ」
切れ切れに聞こえる言葉に、ああ、父は腹を切ったのだと悟る。
薄々、父がそのような事をするのではないかと、私は気づいていたのかも知れない。
家を飛び出した父の硬い横顔が目の前をよぎる。
今、父はどのような顔をしているのだろう。
今すぐにでも駆け出そうとする我が身を押さえ付けるのは、ひどく困難なことだった。
闇を払うように、兄が高らかに告げる。
「九州相良」
「九州相良」
この言葉を聞くために、父は。
「九州相良」
手の先すら見えない闇の中、兄と眼があった気がした。
まだ暖かい骸を抱きしめると、後から後から涙が溢れてきた。
もう後戻りは出来ない。
遊女・瀬川は捨てた。
父が死んだ事で、娘のお米も死んだ。
もう後は夫と手を取り、ひたすらに敵を追いかけるのみだ。
九州相良。
九州相良。
父よ、兄よ。
無駄にはしません。
父の今際の言葉が我知らず零れ出た。
「なんまいだ」
PR
COMMENT