色々
2011/07/29/Fri
「……で、どうしたのよ?」
何が悲しくて大嫌いな半陰陽と差し向かいで食事なんかしてるんだ。
話は少しさかのぼる。
「うわ、どうした?」
この飄々とした兄貴の素っ頓狂な声というのはなかなか聞ける物ではない。
唇だけで小さく笑い、そんな自分にまた自嘲が漏れる。
「なにが?」
「ひでえ顔」
仮にも女に向かってその台詞はどうなのであろうか。
「氷河ときょうだい喧嘩した」
“きょうだい”のところで我知らず力が入ったようで一瞬怪訝な顔をしたが、それについては突っ込まれなかった。
「珍しいね」
そっと、まるで生まれたての生き物に触れるように優しく、頬に兄貴の手のひら。
その瞬間、全てが瓦解した。
腫れた頬がひりひりする。いつもなら見せたくないからゴシゴシ擦るけど、痛くてそんなことできない。
ただ目を見開いたまま、涙が溢れるに任せる。声も出ない。出せない。出したらすがりついてしまいそうだから。
今度こそ仰天した兄貴が慌てふためいて何か言っているが、手加減なしに殴られたせいか泣いているせいか耳がぼんやりしてうまく聞き取れない。
肩を押されそのまま兄貴の部屋で座らさる。
その間も涙は流れ続け、目の前は霞みっぱなしだし鼻血混じりの鼻水も出てくるし、擦ろうとしたら止められ気づけばタオルとミルクを持っていた。
タオルで顔を拭くとやっと視界がクリアになった。
目の前にはちょっと困ったような、それでもすごく優しくて甘えてしまいたくなる笑顔の兄貴。
その瞬間、なぜだか分からないけど、言葉が出なくなってしまった。
胸が詰まって、とかではない。
私はやっぱり、大地を、男として好きだったんだな、と急に気づいた。
過去形だ。
好きな男の事、フラれた男に慰めてもらうの?
この人には相談出来ない。
兄貴としてまだ見られない。
ノドに大きな塊があるようで、飲み込むことも吐き出すことも出来ない。
「落ち着いた?」
頷くに留める。
なんだかすごく恥ずかしい。
何が悲しくて大嫌いな半陰陽と差し向かいで食事なんかしてるんだ。
話は少しさかのぼる。
「うわ、どうした?」
この飄々とした兄貴の素っ頓狂な声というのはなかなか聞ける物ではない。
唇だけで小さく笑い、そんな自分にまた自嘲が漏れる。
「なにが?」
「ひでえ顔」
仮にも女に向かってその台詞はどうなのであろうか。
「氷河ときょうだい喧嘩した」
“きょうだい”のところで我知らず力が入ったようで一瞬怪訝な顔をしたが、それについては突っ込まれなかった。
「珍しいね」
そっと、まるで生まれたての生き物に触れるように優しく、頬に兄貴の手のひら。
その瞬間、全てが瓦解した。
腫れた頬がひりひりする。いつもなら見せたくないからゴシゴシ擦るけど、痛くてそんなことできない。
ただ目を見開いたまま、涙が溢れるに任せる。声も出ない。出せない。出したらすがりついてしまいそうだから。
今度こそ仰天した兄貴が慌てふためいて何か言っているが、手加減なしに殴られたせいか泣いているせいか耳がぼんやりしてうまく聞き取れない。
肩を押されそのまま兄貴の部屋で座らさる。
その間も涙は流れ続け、目の前は霞みっぱなしだし鼻血混じりの鼻水も出てくるし、擦ろうとしたら止められ気づけばタオルとミルクを持っていた。
タオルで顔を拭くとやっと視界がクリアになった。
目の前にはちょっと困ったような、それでもすごく優しくて甘えてしまいたくなる笑顔の兄貴。
その瞬間、なぜだか分からないけど、言葉が出なくなってしまった。
胸が詰まって、とかではない。
私はやっぱり、大地を、男として好きだったんだな、と急に気づいた。
過去形だ。
好きな男の事、フラれた男に慰めてもらうの?
この人には相談出来ない。
兄貴としてまだ見られない。
ノドに大きな塊があるようで、飲み込むことも吐き出すことも出来ない。
「落ち着いた?」
頷くに留める。
なんだかすごく恥ずかしい。
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