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色々
2025/02/02/Sun
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2009/10/25/Sun
「兄貴、早く!」
 舌足らずな声が響き、金髪の美少年がにこにこしながら手を振る。
 その隣には青みがかった銀髪の、これまたタイプの違った美少年。
 少し離れた所には燃えるような赤毛を風にふわふわ靡かせた、天真爛漫を絵に描いたような美少年。
 俺の兄弟って美形ばっかだなあ。
 思わずそんな事を思いながら、ふとガラスに映る自分を見てがっかりする。
 普通だ。普通の顔だ。
 雷のような華やかさもなければ、氷河のように人形めいた顔立ちでも、炎のように可愛らしい相貌でもない。
 ちょっとがっかり。
 まあでもプロトタイプだし、こんなもんかな。
 年頃だから自分の顔も勿論気になるけど、それよりも、炎と氷河の間を漂う不穏な空気が気になる。
 ここ最近、この二人の仲はきわめて悪い。
 今も、お互いの存在を認めてないかのように完全無視だ。完無視だ。
 雷の笑顔も若干引きつっている。
「緑ってどんな子なのかな」
 炎が無邪気な表情で話しかけてきた。
 だけど、気づいてしまった。視界に氷河が入らないようにさり気なく身体を動かしていることに。
 凹むわあ……。
「可愛い女の子らしいよ」
 雷がひゅうっと口笛を吹く。男兄弟ばっかりだから、女の子が入ることで少しは空気が動いたりするかな?
「確か、年齢は俺と氷河、炎の間くらいなんだってね」
 嬉しそうに言う雷を含みのある瞳で見る氷河。ストレートに「氷河と俺を並べないでくれる?」と言っちゃう炎。
「黙れ」
 氷河のきつい瞳がさらに吊り上がった。
 それと同時に、ひゅっと空気が鋭利に、冷たくなった。
 その殺気だった風に呼応して、炎の髪がわずかに膨らむ。
「やめとけ」
 軽く雷に頭をはたかれ、ちょっと睨んだものの素直になるので氷河は楽だが、ややこしい炎がニヤニヤしたので視線でやめさせた。
 長い廊下が更に長く感じられる。
 一つは、新しい兄弟を迎える期待からで、もう一つはいつこいつらが爆発するか、で。
 まだ空気は若干冷たい。
「ほら、制御忘れてる」
 肩を叩いてやると、我に返ったように空気が凪いだ。
 
 ぷしゅ、と軽い音と共に銀色の扉が開く。
 見慣れた蒼白い景色ではなく、会議室のような部屋に不釣り合いな少女が緊張の面持ちで座っていた、
 殺伐とした部屋の中で、そこだけぽっかり春の陽気が抜け出したような雰囲気の少女だ。
「はじめまして、緑です」
 声は緊張して固かったが、それを差っ引かなくともほんわかした穏やかな話し方だった。
「はじめまして! 炎です」
 にっこり満面の笑みで握手を求める。緑はその笑顔にほっと表情をゆるませた。
「よろしくね、緑。俺は雷」
「お兄さんですね、よろしくお願いします」
「固いよー!」
 笑いながら軽く小突く真似をすると、照れたように頬を綻ばせるのがまた可愛い。
「俺が大地、こっちが氷河。よろしくね」
 にっこり笑いかけると、急に真顔になった。
 え、何、と一瞬たじろぐと、視線を逸らされてしまった。氷河に頭を下げている。
 ……軽くショックなんですけど……。
 うちひしがれていると、アラートが鳴り響き、訓練の時間を告げた。
 さっと空気が緊張する。
「今日は全員でなのかな?」
「どうなんだろう、俺は何も聞いてない」
 奥の扉が自動で開き、入るように促される。
 拒否権は、ない。
 
 
「あっ!」
 緑の悲鳴と氷河の舌打ちがほぼ同時に聞こえた。
 真っ白なセラミックのような部屋に閉じ込められ、四方八方からの火炎放射、銃撃。
 狭い部屋なので、お互いの連携が取れていないとぶつかってしまい共倒れになる。
 氷河と緑が接触し、咄嗟に氷河が緑を庇って肌を炙られた。
「氷河!」
 みるみるうちにどす黒くなる肌に焦る。体温が限りなく低い氷河は、火が駄目だ。
 今すぐにでも駆け付けたいが、どこから狙撃されるか分からないため迂闊に動けない。
「氷ちゃん、大丈夫?」
 いつの間にそんな呼び名に……と思うと同時に、氷河の火傷が綺麗に消えた。
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