色々
2009/11/11/Wed
「この傷は誰のせいなの?」
ソファの上に押し倒してマウントポジションを取ってから、顔の横を両腕で挟み込み、わざと体温を上げる。
気丈にも睨み付けてくるが、こめかみに汗が流れているのを見逃さない。
そうだよね、当たったらすごい火傷になっちゃうもんね。
「怖いよねーごめんねー。素直に吐いたらとっとと解放してやるけど?」
蒼白になった氷河の顔色に、あ、こんな言い方したら素直に吐かないかー、と気づく。
「ねえ」
わざと頬に触れようとすると、ビクッとして身を引く。
前まではこんなことなかった。
どんな状況下でも冷静に判断し、こちらの隙を突いて攻撃してくる奴だった。
いや、今でもほとんど変わっていない。
ただ、1点を除いては。
「別にお前に関係ないだろ」
ブリザードのような、冷ややかな視線、声。
いつも通りなのに、わずかに掠れてることに気が付く。
この体勢が、怖いんだ。
「関係ない? へえ?」
わざと嘲るように言い放ち、元の体温に戻した手で無理矢理腕を掴む。
真っ白な腕に点々と残る、一目で噛まれたのだと分かる裂傷。
所々赤黒くなっているのは殴られたのだろうか。
電流でも浴びせられたのか、火傷のようになっている所もある。
油断した瞬間を突かれ、重い蹴りが鳩尾に決まり息が詰まった。
ソファから転げ落ちると同時に身を捻り、更に追い打ちをかけようとしていた蹴りを辛うじて避ける。
目の前でビュンッと音がし、冷気が漂う。
その速度もやや勢いが欠けている気がして、理由も分からず苛々する。
わずかにたたらを踏んだ隙を見逃さず、勢い良く足払いをかけると再びソファに沈んだ。
そのまま起き上がろうとするのを全体重かけて押さえつける。苦しそうな呻き声が聞こえたが気にしない。
自分の体温に細心の注意を払いながら素手で肌に触れると、身体の下で必死で藻掻きだした。
だが、そのままの勢いで上着を捲り上げると不意に力が抜けぱったり動きが止まった。
真っ白な身体に散る、ひどい暴力を受けたとした言いようのない傷跡たち。
火傷の跡でもあれば完璧なんだけどね。刺激された嗜虐心に気が付かぬフリをして、皮肉げに心の中で呟く。
「へえ、ひょーがってこんなのスキなんだぁ。意外!」
動きを止めた氷河の耳元で嘲るように囁くと、真っ赤に染まった目元で睨み付けてきた。
わざと上から見下ろし、ニヤニヤしてやると泣きそうな顔をして目を伏せる。
「……っ」
小さな声で何か言い返してきたが、掠れてしまってここまで届かない。
「ねえ、言っちゃったら? 楽になるんじゃない?」
思いの外真剣な声になった。しまった。
訝しげな顔をした氷河と目が合う。
あんなに強かったのに、あんなに俺の事負かしてきたのに、たかだか1人の人間に壊される?
あんなに高潔な氷河が?
あんなにプライドの高い氷河が?
壊れる?
許さない。
壊されることを受け入れようとしている氷河だって、許さない。
「言えよ」
感情に伴って体温も高くなり、喉で悲鳴を押し殺した氷河が身を捩る。
どこかそれも色めいて見えた。
「そんな風に誘ってるのは誰なの?」
一瞬きょとんとした後、蔑むような目になった。
「そういう発想しかできねぇのか」
吐き捨てる声は、それでも少し震えていた。
「誰なの? ねえ、言っちゃいなよ、苦しいって」
瞠目する無防備な氷河。初めて見た。
まあ氷河も俺に劣らずびっくりしてるみたいだけど。
「苦しいんでしょう? たまに悲鳴が僕の部屋にまで聞こえてきてるよ? あれは素直に悦んでる悲鳴じゃない。それぐらい分かる。何で許すの? 何で何も言わないの? 何で壊されようとするの? このままだったら本当に壊れるよ? 戻れなくなるよ?」
我知らず肩に食い込ませてしまっていた指を外される。目は逸らされたまま。
どうすれば届くんだ?
どうすればこの強固な壁を壊せるんだ?
ソファの上に押し倒してマウントポジションを取ってから、顔の横を両腕で挟み込み、わざと体温を上げる。
気丈にも睨み付けてくるが、こめかみに汗が流れているのを見逃さない。
そうだよね、当たったらすごい火傷になっちゃうもんね。
「怖いよねーごめんねー。素直に吐いたらとっとと解放してやるけど?」
蒼白になった氷河の顔色に、あ、こんな言い方したら素直に吐かないかー、と気づく。
「ねえ」
わざと頬に触れようとすると、ビクッとして身を引く。
前まではこんなことなかった。
どんな状況下でも冷静に判断し、こちらの隙を突いて攻撃してくる奴だった。
いや、今でもほとんど変わっていない。
ただ、1点を除いては。
「別にお前に関係ないだろ」
ブリザードのような、冷ややかな視線、声。
いつも通りなのに、わずかに掠れてることに気が付く。
この体勢が、怖いんだ。
「関係ない? へえ?」
わざと嘲るように言い放ち、元の体温に戻した手で無理矢理腕を掴む。
真っ白な腕に点々と残る、一目で噛まれたのだと分かる裂傷。
所々赤黒くなっているのは殴られたのだろうか。
電流でも浴びせられたのか、火傷のようになっている所もある。
油断した瞬間を突かれ、重い蹴りが鳩尾に決まり息が詰まった。
ソファから転げ落ちると同時に身を捻り、更に追い打ちをかけようとしていた蹴りを辛うじて避ける。
目の前でビュンッと音がし、冷気が漂う。
その速度もやや勢いが欠けている気がして、理由も分からず苛々する。
わずかにたたらを踏んだ隙を見逃さず、勢い良く足払いをかけると再びソファに沈んだ。
そのまま起き上がろうとするのを全体重かけて押さえつける。苦しそうな呻き声が聞こえたが気にしない。
自分の体温に細心の注意を払いながら素手で肌に触れると、身体の下で必死で藻掻きだした。
だが、そのままの勢いで上着を捲り上げると不意に力が抜けぱったり動きが止まった。
真っ白な身体に散る、ひどい暴力を受けたとした言いようのない傷跡たち。
火傷の跡でもあれば完璧なんだけどね。刺激された嗜虐心に気が付かぬフリをして、皮肉げに心の中で呟く。
「へえ、ひょーがってこんなのスキなんだぁ。意外!」
動きを止めた氷河の耳元で嘲るように囁くと、真っ赤に染まった目元で睨み付けてきた。
わざと上から見下ろし、ニヤニヤしてやると泣きそうな顔をして目を伏せる。
「……っ」
小さな声で何か言い返してきたが、掠れてしまってここまで届かない。
「ねえ、言っちゃったら? 楽になるんじゃない?」
思いの外真剣な声になった。しまった。
訝しげな顔をした氷河と目が合う。
あんなに強かったのに、あんなに俺の事負かしてきたのに、たかだか1人の人間に壊される?
あんなに高潔な氷河が?
あんなにプライドの高い氷河が?
壊れる?
許さない。
壊されることを受け入れようとしている氷河だって、許さない。
「言えよ」
感情に伴って体温も高くなり、喉で悲鳴を押し殺した氷河が身を捩る。
どこかそれも色めいて見えた。
「そんな風に誘ってるのは誰なの?」
一瞬きょとんとした後、蔑むような目になった。
「そういう発想しかできねぇのか」
吐き捨てる声は、それでも少し震えていた。
「誰なの? ねえ、言っちゃいなよ、苦しいって」
瞠目する無防備な氷河。初めて見た。
まあ氷河も俺に劣らずびっくりしてるみたいだけど。
「苦しいんでしょう? たまに悲鳴が僕の部屋にまで聞こえてきてるよ? あれは素直に悦んでる悲鳴じゃない。それぐらい分かる。何で許すの? 何で何も言わないの? 何で壊されようとするの? このままだったら本当に壊れるよ? 戻れなくなるよ?」
我知らず肩に食い込ませてしまっていた指を外される。目は逸らされたまま。
どうすれば届くんだ?
どうすればこの強固な壁を壊せるんだ?
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