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色々
2025/01/23/Thu
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2009/12/28/Mon
 私の世界にはこんなのいらない。


 緑色の草原が広がる。
 ざあっと風が凪いでいき、私の緑の髪が舞い上がった。
 柔らかな草の匂いが鼻腔をくすぐり、思わず深く息を吸った。
 花びらが風に遊ばれ、キラキラと光る。
 ピンク、白、黄色、青、赤、オレンジ……色とりどりの小さなかけらは楽しげに宙を舞う。
 両腕を広げ、世界を甘く受け止める。
 なんて美しい。


 その世界に黒くて大きくて、歪な形をしたものが紛れ込んでくるようになった。
 鉄塔のようだったり、ビルのようだったり、鉄柵だったりするけど、一様に黒くて怖いものばかりだ。
 一番上の兄にその話をすると、ふんわりと優しげな表情を曇らせて心配してくれるのだけど、兄にも理由や解決方法はわからなかった。
 兄と呼べばいいのか姉と呼べばいいのか悩ませる人は、一瞬気遣わしげな表情になった後、多分たいしたことじゃないよ気にするな、とその美しい瞳を細めて華やかに笑った。
 砂漠の国の王子様のような明るい兄は、冗談交じりにじゃあその鉄塔を燃やしちゃおうと過激なことを言い、氷の国の魔法使いのように冷たい美貌を持った兄にはたかれた。
 はたいた後、クールビューティはにやりと笑いいっそ全部氷漬けにしちまうか? と物騒なことを本気とも冗談ともつきかねる口調で言った。
 ケラケラ笑い合いながら、こんなに幸せなのに、何故世界にあんなものが紛れ込んできたのか不思議でしょうがなかった。


 新緑が、かたくなってきてる。
 風がわずかに冷たいものを含んでいる。
 鉄塔が聳え立ち、お日様は雲に隠れている、
 私は恐怖のあまり悲鳴を上げ、飛び起きた。
 そのまま小走りに雷の部屋に飛び込み、泣きながら今見たものを捲し立てた。
「そうか……」
 深夜に号泣した妹に叩き起こされ、正直かなり眠いだろうがいつも通り美貌の迫力は衰えず、それどころか重たそうな目元に気怠げな色気をプラスさせた雷が腕を組む。
 Vネックの間からすごい谷間が丸見えで、同じ女の私でもどきどきする。
「とにかく今日はここで寝なさい。怖いものが見えたらまた起こせばいい」
 毛布と、柔らかい雷の身体に包まれ、その温かさに涙がまたこぼれた。
 ぎゅっと抱きつくと、優しく背中を撫でてくれる。
 ぬくもりと共にまどろみながら、また瞳の中に黒い鉄塔が見えてくるのを感じる。
 何故、幸せなのに、あんなものが。


 
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