あまりにも主従に萌えたのですがネタが咄嗟に思い浮かばないので、お題に挑戦♪
可愛い感じで!
ちなみに、従者の名前は某ミュージカルの人とは違うイメージで読んで下さい。
音の響きが好きなんです。
お題はこちらからお借りしました。→http://toy.ohuda.com/
わがままオネガイ10題
『好きって言って!』
「ねえ、ルミエール、大好きよ」
お嬢様がにっこり微笑みながら、突然そんなことを言った。
「そうですか、ありがとうございます」
同じくにっこり笑って返したら、途端に不機嫌そうな顔になった。
「そうじゃなくて!」
そうじゃなくてもなにも。
今は暖炉用の石炭を用意しているところだから、お嬢様には来て欲しくないのだけど……。
「お嬢様、汚れますよ」
不機嫌度、3割増し。
何かまずいことを言ったのだろうか。
この年頃の女の子は本当にわからないところがある。
「だから~~~~そうじゃなくてぇ!!」
『ちょっぴりでも動いちゃダメ!』
「あの……お嬢様」
「なあに? ルミエール」
にこにこ顔のお嬢様に申し訳ないけれど、いい加減腕が痺れてきた。
「もうそろそろ……」
「しっ! ……起きてしまうわ」
愛おしそうな、幸せそうなお嬢様を見ていると、それ以上言えなくなってしまう。
「この子達は幸せね。ルミエールの腕の中で眠れるのだから」
3匹の真っ白な子猫。
遊び疲れたのか、私の腕を枕にしてぐっすり眠っている。
すやすや眠る子猫。幸せそうに見つめる美しいお嬢様。
まあ、この腕ももうしばらく持つでしょう。
だから、もうちょっと待ってて下さいね。
『アレが欲しい、どうしても!』
「いけません」
即答。
「どうして!!」
むくれるお嬢様。
「またそんなお顔をなさって」
「だって!」
スカートを握りしめて、碧い瞳を潤ませて一生懸命訴えてくるけど、そんなことでは流されません。
「まだお嬢様には早すぎます。後半年でお誕生日ではありませんか。その時に……」
「その時では遅いの! 私は今欲しいの!」
日頃から、よもや私にならどんな我が儘を言っても大丈夫と思っているのではないかと薄々感じてはいたけれど……その通りのようで、お嬢様は一歩も引かない。
けれど、ここで許してしまってはミセス・メイラーに怒られるのは私だ。
「何故そのような物がご入り用なのですか?」
搦め手で行く事にした。
「どうしても!」
失敗。
「どうしてもではわかりません。もし理由を教えて頂けたら、何か代わりの物をお持ち出来るかも知れませんよ?」
搦め手続投。
「理由は言えないの!」
大きくため息をつき、私は聞いた。
「天鵞絨のリボンなんて、どうなさるんですか」
お嬢様ほどの小さな方が、とはさすがに言わなかった。
「しかも、あのリボンは奥様が旦那様に送られた記念の品ですよ。なくなってしまったら、奥様がおかわいそうではありませんか?」
私の言葉に何か感じる物があったのか、さすがにお嬢様も黙って俯いた。
「以前、ハウスメイドが噂をしていましたが、街に安くて質の良い生地やリボンを売っているお店があるそうです」
お嬢様の目が輝いた。
「では、今度のお休みに一緒に行きましょう!!」
本当に、この年頃の女の子はわからない。
『結婚なんて一生しないで!』
それはまだ、私がここのお屋敷で働き始めて日が浅い頃。
「あーあ。私もそろそろ結婚したいなぁ」
窓ふきをしているハウスメイド達が囁き合っているのを聞いてしまった。
こっそり立ち止まって聞き耳を立てる。
「どうしたの? 突然」
「最近読んだ本で、素敵なお話があったの」
そのまま彼女達はロマンス話に夢中になる。
結婚か。
私もいずれは考えなければならないのだろう。
そういえば、結婚して辞めて行くハウスメイドが今年は多いようだ。
憧れがないというと嘘になるが、今はまだ勤め始めたばかりで先のことがわからない。
仕事もうまくいかないし、漠然とした不安を持っているばかりの毎日だった。
「ルミエール!」
しまった、ぼうっとしていた。
「どうしたの?」
舌足らずなしゃべり方で、金髪の美少女が覗き込んでくる。
あどけない顔には伺うような、不安げな視線。
「申し訳ございません、お嬢様。昨夜遅くまで本を読んでしまって……」
「何の本?」
「メイド達が噂していたのですよ」
そう言って差し出した本を、お嬢様はパラパラめくり始めた。
お嬢様には少し早いけれど、年頃の女の子の好きそうな、甘い恋の話だった。
挿絵もほどよく入っていて、気が向けば絵だけでも見るかも知れない。そう思って持ってきたのだった。
「あ……」
お嬢様が思わず声を漏らした。
どうしたのかとこっそり覗き込むと、挿絵を食い入るように見つめている。
美しいドレスを着た女性と、その女性に求婚するたくましい若者の挿絵だ。
興味を持ったのかとワクワクしていると、不意に真剣な顔のお嬢様と目が合った。
「ルミエールも結婚のことを考えたりするの?」
どうやら興味の対象は私に移ったようだ。
「どうしてですか?」
結婚するということは、ここを辞めるということに等しい。
安易に返事をすることは躊躇われた。
「ダメよ」
「はい?」
「絶対絶対、ダメだからね!!」
その拍子に、お嬢様の瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
あまりのことにぽかんと見つめていると、お嬢様は私の服の裾を握ってダメな理由を一生懸命訴え始めた。
しゃべり方もたどたどしいし、思いが溢れすぎて言葉になっていなかったが、胸に迫ってきた。
「ルミエールがいないと、暗くなっちゃうでしょ!」
お嬢様が呼ぶ私の名前は、とても美しいもののように聞こえた。
たぶんこのときだと思う。
お嬢様に一生お仕えしようと思ったのは。
『人前でも態度を変えないで!』
お嬢様が、社交界にデビューすることになった。
私は朝から大忙しだ。
ドレスの着付け、小物の用意、髪。
と、お嬢様が騒ぎ始めた。
「扇子がないぃ……っ!」
どうやら、お気に入りの深い緑の扇子が見つからないようだ。
お陰で私は馬車の来るギリギリまで探し回る羽目になった。
「見つかったか?」
バトラーのエコー様がベッドの下を覗きながら振り返る。
「いいえ……」
もういい加減疲れてきた。
「以前森にある湖に行っただろう。あの時に使用した馬車は見たか?」
「先程見ました。残念ながら、ありませんでした」
ため息をつく私をそっと引き寄せる、たくましい腕。
驚いて顔を上げると、秀麗な眼差しがすぐ側にあった。
頬が熱くなる。
「二人きりの時くらい、言葉を崩してはどうだ?」
「……誰かに見られたら困ります」
顔を背けると、ふっと笑った気配がした。
「頑ななことで」
「何とでも」
「そのような表情も嫌いではない」
柔らかな眼差しを頬に感じる。
いっそう朱が濃くなった気がする。
「そんなことおっしゃらずに……扇子を探さないと」
あまりの恥ずかしさに卒倒しそうで、軽く腕を突っ張ると存外簡単に身体は離れた。
それを少し残念だと思ってしまう自分がはしたない。
顔を隠すようにチェストの中を探っていると、コツと固いものにあたった。
「あ……ありましたわ」
これでお嬢様が無事にデビュー出来る。
そう安心して顔を上げると、扉が少し開いていることに気がついた。
さっと私の顔が曇ったのを見て取り、視線を追ったエコー様が首をかしげた。
「さっきまで閉まっていたのだが……覗かれてしまったかな」
『夢の中でも助けに来て!』
ルミエールは、私のそばにずっといるのだと思っていた。
無邪気にも、そう信じていた。
でも違った。違った違った違った。
もしかしたらルミエールは結婚して辞めてしまうかもしれない。
私の側からいなくなってしまうかもしれない。
だって、お気に入りのパーラーメイドのマリアも、ハウスメイドのジェシーも、気づいたらいなくなっていたんだもの。
ルミエールだって、いなくなってしまうかもしれない。
そんなことばかり考えていたものだから、私は気がつかなかった。
馬車が、お呼ばれしているおうちに向かわずに、どんどん細い道に入っていく事に。
森が近くなっている事に。
「エコー様、わたくしやはり追いかけようと思います」
「本気か?」
どうも嫌な予感がしてならない。
違和感をはっきりとは口にできないけれど、先刻お嬢様を迎えに来た馬車は、向こうのお家柄からするとどうもそぐわない物のように感じてしまって。
「もし違っていた場合、向こうにもこちらの顔にも泥をぬることになり得るのですよ」
「百も承知です」
「それでも追いかけたいのですか」
「はい」
毅然と頷くと、エコー様は少し悩むように面を伏せ、すぐに顔を上げた。
「」
ちょっと渋めのピンク色のダウンジャケットが素敵だと思って、なんとなく意識に残ってたんです。
ハイウエストで絞ってあって細身に見えるし、ファーも落ち着いた茶色の羽毛で。
華やかなピンクのストールを無造作に中に入れて、濃いキャメルのロングブーツ。
その女性は誰かを探すみたいにきょろきょろしたと思ったら、急ににっこり控えめな笑顔になって私の目の前にいた年かさの男性の所に駆けてきました。
関係が気になって耳をそばだててたら、どうやら父娘だったみたいで。
どうやらお友達の家でバレンタインチョコの試作品を作ったようで、「笑い転げながら作ってた」「ティラミス冷やして食べようね」なんて華やいだ声で話していました。
それに対応する父親の声も落ち着いていて、ああ、仲のいい親子なんだなぁとほほえましくて。
二人の後頭部を羨望のまなざしで眺めていました。
何が起こったのか、最初はわかりませんでした。
人通りの多い交差点。
歩行者用信号が青になると同時に、ぞろぞろと人の群れが動き出します。
私も、目の前の父娘から視線を足元に落として歩き出します。
バレンタインどうしよう、何個くらいいるかな? そんなことを考えていました。
誰かの叫びが聞こえました。
今となって思ったら「危ない」と叫んでいたように思いますが、その時はただの音としてしか認識できず、反射的に顔を上げると、私の眼前スレスレに大型のバスが、飛び込んできました。
そこからは、阿鼻叫喚でした。
間一髪助かった私は気が付けば、血と悲鳴にまみれた交差点で呆然と座り込んでいました。
誰かが誰かを探す声、苦痛に呻く声、泣き声、叫び声、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴。
ふと生暖かい感触に手を見ると、真っ赤な血が、ついていました。
すごく近くで悲鳴が聞こえると思ったら、我知らず悲鳴をあげていました。
目の前では、倒れたバスに巻き込まれた人を助け出そうと人々が集まってきています。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきます。
こんなにたくさんのサイレン、初めて聞きました。
ただしゃにむに悲鳴を上げていましたが、ふと気づけば救急車に乗せられていました。
乗せられるまでの経緯は覚えていませんが、やっとそこで何とか正気を取り戻した私は医師の診断を受けるため、しかるべき病院で手当を受けることになりました。
予感とでもいうのでしょうか。
見るともなしに後部を見ると、ドアが開いていました。
そこからは横転したバスが見えます。
車体の下からはいまだ血が流れ出していました。
けれど、私にはそんなもの見えませんでした。
医師二人に抱え込まれるように、男性が座り込んでいます。
車体の真下から、見覚えのあるキャメルが捩れ出しています。
ぐっしょりと赤黒い液体に濡れた、渋いピンク。
目が覚めたら病院でした。
よもや、齢18歳の自分がこんな言葉を思い浮かべざるをえない状況になるとは思ってもいなかった。
気付いたのは、本当に些細なきっかけだった。
体育の時間にマラソンがあった。
持久力とか体力とか根性とか努力とか、長距離走る上で必要なものを一切持ち合わせていない私は、そうそうに息が上がってしまった。
ぜぇぜぇ言いながら完走すると、私より少し先にゴールしていた彼女と、ばっちり目があった。
彼女は動揺し、私から目を逸らし、そわそわしながらスポーツドリンクを何度も持ち直し、その合間合間に私を見、やがて諦めたように完全に私に背を向けた。
その目の色、温度、籠もった感情を、私は知っていた。
私には彼氏がいない。
俗に言う、「年齢=彼氏いない歴」だ。ん、古い? この言い方。まあいいじゃない。
ちなみに処女だ。これで非処女ならそれはそれでなにやら語るべきことが増えるけど、そんな心配はないです。
けど、そんな私にも王子様が現れた。
新任の高梨先生。
見た目がまず、完全に私のツボだった。
次に、声が私の心を鷲づかみにするバリトンだった。
意外と筋肉質なところにもキュンときた。
優しく私を褒めてくれたところで、落っこちた。
初恋、だった。
こんな想いは知らなかった。
思春期の女の子らしく、私は彼に夢中になった。
その私の瞳に宿った感情と、彼女の瞳のそれは、かなり似通っていた。
まさに、青天の霹靂。
同性同士の色恋沙汰があると言うことは知ってはいるものの、まさか自分がその当事者になってしまうとは。
困惑した。
かなり困った。
気付いてしまうと、意識してしまうもの。
常に彼女の視線が、私に張り付いていることに気がついた。
困った。
そんな熱い瞳で私を見ないで。
ああ、いやだな、あの目の熱。
私と同じじゃないの。
あの人のことを考えるだけで、何故か涙がでそうになった。
愛しくて愛しくて、今すぐにでも抱きしめたくなった。
こっちを向いてくれないことに絶望して、憎んだこともあった。
失恋しちゃった。
わかってたんだ、本当は。
この恋は報われないものだって。
だけど、「カレシほしーなー」なんて言いながら自虐的に笑うあなたを見て安心してた。
まだ、想うことは許されている。
誰のモノにもなっていないあなたを、もしかしたら私を向いてくれるかも知れないという希望を抱いて想うことは。
私が男の子なら。
あなたに告白することも許されたかも知れない。
昔話の人魚姫は魔女の薬を飲み、脚と引き替えに声を失った。
脚なんかいくらでもあげるから、私には魚の尾を。
その尾でわたしは海の果てへ。
そうすればあなたを忘れることも出来るだろう。
私には、声を差し出しても魔法の薬なんて得られないから。
王子様に恋した人魚姫は魔法で陸へ。
お姫様への恋が破れた私は、どこへいこう?
私はただ、好きになっただけ。
人を好きになるというのは事故に似ている。
突然何かわからない衝撃が体を突き抜け、後はもうどんな言い訳をしようが、どう足掻こうが、ごろごろ転がっていくだけなのだ。
初恋、だった。
人目につかないように一人で泣いているあの人を見てから。
綺麗な髪に光る天使の輪から、白くすらりとした指先から、なだらかなふくらはぎのラインから、笑うと覗く八重歯から、潤んだ瞳から、すべてから目が離せない。
朝、登校するとすぐ、あの人がいるかどうか教室をさっと一瞥する。
自転車通学の私と違って、近くに住んでいるあの人は、いつも朝礼10分前に快活な足音を響かせて廊下を闊歩してやってくる。教室に入るなり、綺麗な、よく通る声でみんなに挨拶をする。
人気者のあの人は、机に向かうまでに何人ものクラスメイトから、肩をたたかれたりなんだかんだと話しかけられたり。
最近はそんなこともなくなったけど、前はかなり嫉妬したものだ。
私はあんな風に自然に話しかけられない。
意気地がない自分が悪いだけ。
授業中、あの人は時々居眠りをする。
気持ちよさそうに目を閉じて、うとうと船をこぐ。
私が隣の席なら、眠っているあの人の横顔を堪能できるのに。
きっと、睫が長いんだろうな。白い頬に影を落としているくらいだもの。
すごく気にいているみたいだけど、すべすべしたおでこにぽつんとあるにきびすら可愛い。
ま、隣の席になんてなれっこないし、もしなれたとしても、きっと緊張して動けないであろう自分が恨めしいし情けない。
夏になり、水泳の授業は目にまぶしすぎた。
時々見学することになったあの人にほっとする。
授業中、暑いのか脚を何度も組み替えるあの人にやきもきする。
頼むから、じっとしていて欲しい。いつもはおとなしいあなたの大きな動きは目につくから、先生に注目されてしまうよ?
ほら、当てられた。しかも注意もされた。
秋になり、美味しそうにおにぎりを頬張る姿に笑いが込み上げる。
可愛くて可愛くて、おにぎりになりたいとすら思う。
読書はそんなに好きじゃないみたい。
でも興味があるのか、私の鞄からはみ出している本について話しかけてきてくれた!
ありがとう、村上春樹。
あの人の気を引くタイトルをつけてくれてありがとう!
もうこれからは「村上春樹は回りくどくて何を言ってるかわからない」なんて言わない!
冬のになり、寒さに弱いあの人は、膝掛けを肩から羽織って震えている。
何度、抱きしめて暖めてあげたいと思った事か。
私の体温を全部あげる。蒼白になって震えているあなたを見たくない。
…………私にはカレシがいるの。
1年生の時から付き合っているカレシが。
初体験もすませたし、仲睦まじくやってきていると思っていた。欲求不満なんかじゃない。
自分で言うのもなんだけど、尽くすタイプだと思うし、まさか他の人を目が追ってしまうなんてあり得ないと思っていた。
だけど、彼には感じたことのない衝撃が私を突き抜けてしまった。
こんな、身をじりじりと焦がすような思いは、彼に対して感じた事はなかった。
もう卒業だ。
どうしよう、この思い、伝えた方がいいのかな。
離れてみれば、消えてしまうものなのかな。
考えるだけで涙が出そうなあの人の事。忘れてしまえるのかな。
卒業式のリハーサルの後、最初にあの人を見たお手洗いに行ってみた。
今も誰かが使っているけど、ここの個室の扉が開いて、何でもないような顔をした、だけど目の縁が赤くなって泣いたことが判っちゃう顔であの人が出てきたんだ。
何となくぼんやり眺めていると、扉が開いた。
あのときの、再来かと思った。
泣きはらした目であの人が出てきた。
呆然とした私に、照れ笑いを浮かべながら「リハで泣いたなんて恥ずかしくて」とあなた。
二人で並んで歩きながら、
「私も!私も悲しくなって、感傷的になっちゃて……」
「そうだよね、悲しいよね。あー。もう卒業かぁ」
まともに言葉を交わせた。
その喜びでしばらく気づかなかったけど、あの人は外を気にしているみたいだった。
視線の先には、去年入ってきたばっかりの、背の高い男前の先生。
その視線の色、温度で気づいてしまった。
自分が、失恋したことに。
百合です。