色々
2012/04/17/Tue
久しぶりに心が浮き立つ。
こんなにワクワクすること、大人になってからそうそうないわよねー。
でも、今日は特別。
例の美術館で出会ったイヴと、久しぶりに会うんだから
「あ、イヴ、こっちよ」
声とアンバランスなしゃべり方に、周りの人がぎょっとしたような目で振り向く。
そしてその流れで二度見。
アタシの見た目かと思うのは自意識過剰かしら。以前はそうだったんだけどねー。
十中八九、待ち合わせ相手が女の子、それも美少女だから。
「どう?」
にっこり笑って問いかけると、美味しい! とのこと。よかったわ。
表情の変化はあまりないけど、思い込みかしら? 嬉しそうにみえる。
美少女と二人、アタシのオススメカフェでオススメのマカロンを囓る。
オープンテラスなので通りすがる人の視線集めまくりなのは何かアレだけど、まあ細かいことはいいでしょう。
「それにしても、よくおうちの人が許してくれたわね」
これは気になっていたので、是非とも確認しておきたかった。
お母様とは電話で念のため話をしたけど……伝わり方によっては、アタシは幼気な美少女を連れ回す悪いおっさんになってしまう。それだけは回避したい。
イヴはどうやらアタシのことを美術館でお世話になった人だと説明してくれたようで、すんなり会うことができたけど……。
こんなにワクワクすること、大人になってからそうそうないわよねー。
でも、今日は特別。
例の美術館で出会ったイヴと、久しぶりに会うんだから
「あ、イヴ、こっちよ」
声とアンバランスなしゃべり方に、周りの人がぎょっとしたような目で振り向く。
そしてその流れで二度見。
アタシの見た目かと思うのは自意識過剰かしら。以前はそうだったんだけどねー。
十中八九、待ち合わせ相手が女の子、それも美少女だから。
「どう?」
にっこり笑って問いかけると、美味しい! とのこと。よかったわ。
表情の変化はあまりないけど、思い込みかしら? 嬉しそうにみえる。
美少女と二人、アタシのオススメカフェでオススメのマカロンを囓る。
オープンテラスなので通りすがる人の視線集めまくりなのは何かアレだけど、まあ細かいことはいいでしょう。
「それにしても、よくおうちの人が許してくれたわね」
これは気になっていたので、是非とも確認しておきたかった。
お母様とは電話で念のため話をしたけど……伝わり方によっては、アタシは幼気な美少女を連れ回す悪いおっさんになってしまう。それだけは回避したい。
イヴはどうやらアタシのことを美術館でお世話になった人だと説明してくれたようで、すんなり会うことができたけど……。
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2011/11/13/Sun
兄の、つい先刻兄だと分かった人の、取り乱した声が闇夜を裂く。
切れ切れに聞こえる言葉に、ああ、父は腹を切ったのだと悟る。
薄々、父がそのような事をするのではないかと、私は気づいていたのかも知れない。
家を飛び出した父の硬い横顔が目の前をよぎる。
今、父はどのような顔をしているのだろう。
今すぐにでも駆け出そうとする我が身を押さえ付けるのは、ひどく困難なことだった。
闇を払うように、兄が高らかに告げる。
「九州相良」
「九州相良」
この言葉を聞くために、父は。
「九州相良」
手の先すら見えない闇の中、兄と眼があった気がした。
まだ暖かい骸を抱きしめると、後から後から涙が溢れてきた。
もう後戻りは出来ない。
遊女・瀬川は捨てた。
父が死んだ事で、娘のお米も死んだ。
もう後は夫と手を取り、ひたすらに敵を追いかけるのみだ。
九州相良。
九州相良。
父よ、兄よ。
無駄にはしません。
父の今際の言葉が我知らず零れ出た。
「なんまいだ」
切れ切れに聞こえる言葉に、ああ、父は腹を切ったのだと悟る。
薄々、父がそのような事をするのではないかと、私は気づいていたのかも知れない。
家を飛び出した父の硬い横顔が目の前をよぎる。
今、父はどのような顔をしているのだろう。
今すぐにでも駆け出そうとする我が身を押さえ付けるのは、ひどく困難なことだった。
闇を払うように、兄が高らかに告げる。
「九州相良」
「九州相良」
この言葉を聞くために、父は。
「九州相良」
手の先すら見えない闇の中、兄と眼があった気がした。
まだ暖かい骸を抱きしめると、後から後から涙が溢れてきた。
もう後戻りは出来ない。
遊女・瀬川は捨てた。
父が死んだ事で、娘のお米も死んだ。
もう後は夫と手を取り、ひたすらに敵を追いかけるのみだ。
九州相良。
九州相良。
父よ、兄よ。
無駄にはしません。
父の今際の言葉が我知らず零れ出た。
「なんまいだ」
2010/12/11/Sat
ぎしり、とベッドに誰かの体重がかかった気がした。
密やかな呼吸が耳朶をくすぐり、毛布が取り去られた時点で意識がようやく「何か変だぞ」と浮上する。
急な闇に慣れない目でも、自分にのしかかる黒い影を捉えられた。それが誰かも。
驚愕は声にならなかったが、強ばった身体の反応で闖入者にも目覚めがわかったのであろう。喉で笑う気配があった。
「……お前、何してんだ」
無言で闖入者の無骨な手が身体を撫でる。
押し退けようと腕を突っ張るが、難なく手首を掴まれる。
振り払おうと力を込めた瞬間、察したように動きを変えた闖入者と目が合った。
笑うように歪んだ口元と縋るような瞳が月の光に反射し、射竦められたように呼吸すらままならなくなる。
そう言えばこいつ、夕方から何か様子がおかしかった。
瞳の中に広がる真っ暗な闇に飲み込まれてしまったのかも知れない。
乾いた唇が触れるのを避ける事もできず、ただなすがままに受け入れた。
性行為の経験はないはずだが。いや、これは性行為ではないが。それを彷彿とさせる物であることは確かだ。疲れることが嫌いだとか言ってたはずだ。ここまでは疲れることではないのか。それにしても何がしたいんだこいつは。
咎めるように、ぬるりとした物が入り込み口内を動き回る。
ぞわっと肌が粟立つ。それは嫌悪以外の何でもなく、のしかかる闖入者を何とか押しのける。
と、闖入者の視線が動く。
つられて目をやると、例の、小指。
思わず動きを止めてしまう。格好の隙になってしまうとは後で気づいた。
密やかな呼吸が耳朶をくすぐり、毛布が取り去られた時点で意識がようやく「何か変だぞ」と浮上する。
急な闇に慣れない目でも、自分にのしかかる黒い影を捉えられた。それが誰かも。
驚愕は声にならなかったが、強ばった身体の反応で闖入者にも目覚めがわかったのであろう。喉で笑う気配があった。
「……お前、何してんだ」
無言で闖入者の無骨な手が身体を撫でる。
押し退けようと腕を突っ張るが、難なく手首を掴まれる。
振り払おうと力を込めた瞬間、察したように動きを変えた闖入者と目が合った。
笑うように歪んだ口元と縋るような瞳が月の光に反射し、射竦められたように呼吸すらままならなくなる。
そう言えばこいつ、夕方から何か様子がおかしかった。
瞳の中に広がる真っ暗な闇に飲み込まれてしまったのかも知れない。
乾いた唇が触れるのを避ける事もできず、ただなすがままに受け入れた。
性行為の経験はないはずだが。いや、これは性行為ではないが。それを彷彿とさせる物であることは確かだ。疲れることが嫌いだとか言ってたはずだ。ここまでは疲れることではないのか。それにしても何がしたいんだこいつは。
咎めるように、ぬるりとした物が入り込み口内を動き回る。
ぞわっと肌が粟立つ。それは嫌悪以外の何でもなく、のしかかる闖入者を何とか押しのける。
と、闖入者の視線が動く。
つられて目をやると、例の、小指。
思わず動きを止めてしまう。格好の隙になってしまうとは後で気づいた。
2010/10/29/Fri
これはまだ、火と水が出会ったばかりの頃のお話。
「大丈夫よ」
精一杯微笑む。
「怖くないわ。私では貴方を消すことはできないもの」
それは本当の事。本気を出せば二人とも消える。
もう貴方は小さな子どもじゃない。
ニンゲンの力は恐ろしい。あんなに小さかった貴方の凄まじいパワーを引き出した。
でも貴方の心は、まだ小さな子どものまぁんま。
「うるさい。怖がってなんかない」
「……ごめんなさい」
どうすれば貴方の心に触れられる?
「大丈夫よ」
精一杯微笑む。
「怖くないわ。私では貴方を消すことはできないもの」
それは本当の事。本気を出せば二人とも消える。
もう貴方は小さな子どもじゃない。
ニンゲンの力は恐ろしい。あんなに小さかった貴方の凄まじいパワーを引き出した。
でも貴方の心は、まだ小さな子どものまぁんま。
「うるさい。怖がってなんかない」
「……ごめんなさい」
どうすれば貴方の心に触れられる?
2010/10/21/Thu
「ただいま……」
思わず途中で口ごもる。
玄関口には基子のローファーと、ここ最近見慣れた男物のスニーカー。
またあいつか……基子に変な事してたら承知しねえぞ。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
楽しげ?な感じで話していた二人がこちらを向く。
笑顔だ。
あいつもめっちゃ笑顔だ。
「おにーさんおかえりなさーい!」
何でそんなにキラキラした笑顔なんだ。北原。
「なにしてんの」
「もー何でお兄ちゃんいきなり機嫌悪いのよ……」
兄はお前が心配なのよ。
と、思っていたのだけど、いつの間にこういう状況になっているのだろうか。
頭がふわふわする。
「……なに……?」
ソファで蹲る俺にのし掛かる北原。
何か、鼻息荒いんですけど。
「いや、体調悪そうだけどどうしたのかなって」
近い。
近すぎる。
こういうのを密着というのではないだろうか。
「……大丈夫だから」
「お兄さんお酒弱いんですか?」
……。
驚いて目を上げると、嫌な笑いを浮かべた北原がなにやら瓶を持っている。
赤い服を着た、長い棒を持った男の絵。
見るからに酒っぽいんですけど……。
思わず途中で口ごもる。
玄関口には基子のローファーと、ここ最近見慣れた男物のスニーカー。
またあいつか……基子に変な事してたら承知しねえぞ。
「あ、お兄ちゃんおかえり」
楽しげ?な感じで話していた二人がこちらを向く。
笑顔だ。
あいつもめっちゃ笑顔だ。
「おにーさんおかえりなさーい!」
何でそんなにキラキラした笑顔なんだ。北原。
「なにしてんの」
「もー何でお兄ちゃんいきなり機嫌悪いのよ……」
兄はお前が心配なのよ。
と、思っていたのだけど、いつの間にこういう状況になっているのだろうか。
頭がふわふわする。
「……なに……?」
ソファで蹲る俺にのし掛かる北原。
何か、鼻息荒いんですけど。
「いや、体調悪そうだけどどうしたのかなって」
近い。
近すぎる。
こういうのを密着というのではないだろうか。
「……大丈夫だから」
「お兄さんお酒弱いんですか?」
……。
驚いて目を上げると、嫌な笑いを浮かべた北原がなにやら瓶を持っている。
赤い服を着た、長い棒を持った男の絵。
見るからに酒っぽいんですけど……。