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色々
2025/02/03/Mon
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2009/11/06/Fri
「ねえ」
 最近は、声の温度で分かるようになってしまった。
 雷が、発情してる時が。
「あ、雷。どうしたの?」
 それでも気づかないふりをする。
 発情してるときの雷は必死な事が多いので、こちらが気づいていることに気づかない。
 どうすればこっちがその気になるのか、悩んでる。
 ただ、こっちも必死だ。
 どうやってうまく躱そうか悩むのはやめた。
 どうすれば強姦にならないように持って行くか考えることにした。
 
 事の起こりは2ヶ月前、雷とこういう関係になってすぐだ。
 雷はホルモンの影響からか、発情期がすぐにくる。
 その度に誘われるのだけど、元々淡泊なのでその気にならない事がほとんどで、誘いに乗ったとしてもすぐに寝てしまったり、断ったりしてた。
 そしたら、ついに雷がぶち切れた。
 
 帰宅してすぐに、部屋にただならぬ空気が充満している事に気づいた。
 どこかからか漂う、強烈な敵意のようなもの。
 その烈しさをどこかで感じたことがあるのだが分からず、何食わぬ顔をしながら発生源を探す。
 炎か? 最近は闇討ちに遭うような喧嘩をした覚えはないが。
 それか、雷に隠してる事がどれかバレたか?
 どちらかによって対応が変わってくる。一瞬悩んだスキを突かれ、反射的に防御姿勢を取った時には息が詰まり身体は硬直してしまっていた。
 雷かぁ……。
 どれがバレたんだ?
 その内容によっては火に油なので、すんでの所で反撃は控えた。
 ただ無抵抗にやられるのは趣味じゃないので、身の周りを覆うように薄い氷の膜を張る。
「…………何」
 手出しできないようにしてから、痛みを堪えて口を開く。
「何も」
 冷ややかな声がすぐ後ろから聞こえて、ちょっと肌が粟立った。
 何、この重たい声。
「じゃあ何で自室で兄弟に攻撃を受けているのかの理由が全く分からないのですが」
 自分の身体をかき抱くようにして呼吸を整えていると、雷の振り上げた拳であっけなく氷が割れた。
 え、そんな簡単に割れるような厚みじゃなかったはずだけど。
 視界が反転し、ベッドに引きずり込まれる。
 何も抵抗しないのを良いことに、乱暴にカッターシャツを引き裂かれる。
 この時点でやっと、何がしたいのか気がついた。
「雷!」
 咎めるように名を呼ぶと、手首を噛まれた。
 真っ白な肌を伝うほどの流血に引く。
 それでも身体を反転させ、雷に背を向けて蹲る。
 背中を見せることになるが、仕方がない。正面には急所が……。
 その背中に叩きつけるように舌打ち。
 それ、こっちがしたいから。
 頬に手を添えられ、無理矢理顔を向けさせられる。馬鹿力め。
「何で抵抗するの」
「しないわけないだろ、何だよ」
 ちょっと苛々しながら吐き捨てると、冗談抜きで空気が凍った、ように感じた。
 そのまま洒落にならないくらいの電撃を直に叩き込まれる。
 しかも、顔から……!!
 冗談抜きで目が飛び出るかと思った。
 脳髄を力任せに揺さぶられたような衝撃。
 気を失っていたのは一瞬だったようだが、この状況の俺には長すぎる。
 硬直した身体を無理矢理広げられ、雷が潜り込んでくる。
 喉に噛み付かれ、やわらかな皮膚が裂ける。ぞわりと恐怖が這い上がった。
 逃げようと身を捩ると、すごい力で押さえつけられた。
 本当にやめて欲しくて雷を仰ぎ見ると、泣きそうになった目がこちらを見据えていた。
「抵抗しないでよ」
 こちらが怯んだ瞬間、目付きが獣のようなものに変わった。
「ね、だからお願い」
 言葉だけなら甘い蜜のように脳を蕩かすが、身体の痛みは依然続いている。
 それでも無理矢理探られ、痛みの中でも快感を拾い始める身体が恨めしい。
 本当に雷が好きなら、死にものぐるいで抵抗すべきなのか。
 無抵抗なのがいいことなのか。
 だが、そういった偽善的な思いは電撃込みの愛撫で溶ける。
 既に勃ち上がった自身はドロドロになり、情けなさと快感で涙が出てくる。
 体液によって通りやすくなった電流が弱いところを刺激し、我知らず腰が揺らめく。
「やらし」
 ニヤニヤ笑われ、羞恥で爆発しそうだ。
「ほら、もういっちゃいなよ」
 どんどん電流を強くされ、過ぎた快感で苦しくなる。
 唇からは意味のある言葉が出てこない。
 手も足も出せない俺を獰猛な目で見ていた雷が不意に、電流の鋭さを変えた。
「---ッ!! ぁ……ッ!」
 甲高い悲鳴が最初、自分のクチから出たものとは信じられなかった。
「なに……っ、らい、いやッ」
「前立腺狙ってみたんだ。あたってる?」
 そりゃもう。
 必死で雷を押しのけようと腕を突っ張るが、身体全体で抱え込まれこれ以上身動きが取れない。
「やだやだやだやだ……ッ や、だぁ」
 恥ずかしいとか言ってられず、壊れたレコードのように繰り返す。
 息の吸い方が分からない。
「お願い、らい、やだ、なんか漏れる……ッ やめッ、やだぁ!」
 とにかく藻掻き続けるが、どれだけ逃げようとしても快感は追ってくる。
 無理矢理高められる身体を持てあまし、吐き出したいのかやめて欲しいのか自分でも意識できないままただただ拒否の言葉をこぼし続ける。
 目を開いてるのか閉じてるのか、自分でも分からない。何も見えない。
 ただ、雷の悲しそうな顔は見えた。
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2009/10/25/Sun
「兄貴、早く!」
 舌足らずな声が響き、金髪の美少年がにこにこしながら手を振る。
 その隣には青みがかった銀髪の、これまたタイプの違った美少年。
 少し離れた所には燃えるような赤毛を風にふわふわ靡かせた、天真爛漫を絵に描いたような美少年。
 俺の兄弟って美形ばっかだなあ。
 思わずそんな事を思いながら、ふとガラスに映る自分を見てがっかりする。
 普通だ。普通の顔だ。
 雷のような華やかさもなければ、氷河のように人形めいた顔立ちでも、炎のように可愛らしい相貌でもない。
 ちょっとがっかり。
 まあでもプロトタイプだし、こんなもんかな。
 年頃だから自分の顔も勿論気になるけど、それよりも、炎と氷河の間を漂う不穏な空気が気になる。
 ここ最近、この二人の仲はきわめて悪い。
 今も、お互いの存在を認めてないかのように完全無視だ。完無視だ。
 雷の笑顔も若干引きつっている。
「緑ってどんな子なのかな」
 炎が無邪気な表情で話しかけてきた。
 だけど、気づいてしまった。視界に氷河が入らないようにさり気なく身体を動かしていることに。
 凹むわあ……。
「可愛い女の子らしいよ」
 雷がひゅうっと口笛を吹く。男兄弟ばっかりだから、女の子が入ることで少しは空気が動いたりするかな?
「確か、年齢は俺と氷河、炎の間くらいなんだってね」
 嬉しそうに言う雷を含みのある瞳で見る氷河。ストレートに「氷河と俺を並べないでくれる?」と言っちゃう炎。
「黙れ」
 氷河のきつい瞳がさらに吊り上がった。
 それと同時に、ひゅっと空気が鋭利に、冷たくなった。
 その殺気だった風に呼応して、炎の髪がわずかに膨らむ。
「やめとけ」
 軽く雷に頭をはたかれ、ちょっと睨んだものの素直になるので氷河は楽だが、ややこしい炎がニヤニヤしたので視線でやめさせた。
 長い廊下が更に長く感じられる。
 一つは、新しい兄弟を迎える期待からで、もう一つはいつこいつらが爆発するか、で。
 まだ空気は若干冷たい。
「ほら、制御忘れてる」
 肩を叩いてやると、我に返ったように空気が凪いだ。
 
 ぷしゅ、と軽い音と共に銀色の扉が開く。
 見慣れた蒼白い景色ではなく、会議室のような部屋に不釣り合いな少女が緊張の面持ちで座っていた、
 殺伐とした部屋の中で、そこだけぽっかり春の陽気が抜け出したような雰囲気の少女だ。
「はじめまして、緑です」
 声は緊張して固かったが、それを差っ引かなくともほんわかした穏やかな話し方だった。
「はじめまして! 炎です」
 にっこり満面の笑みで握手を求める。緑はその笑顔にほっと表情をゆるませた。
「よろしくね、緑。俺は雷」
「お兄さんですね、よろしくお願いします」
「固いよー!」
 笑いながら軽く小突く真似をすると、照れたように頬を綻ばせるのがまた可愛い。
「俺が大地、こっちが氷河。よろしくね」
 にっこり笑いかけると、急に真顔になった。
 え、何、と一瞬たじろぐと、視線を逸らされてしまった。氷河に頭を下げている。
 ……軽くショックなんですけど……。
 うちひしがれていると、アラートが鳴り響き、訓練の時間を告げた。
 さっと空気が緊張する。
「今日は全員でなのかな?」
「どうなんだろう、俺は何も聞いてない」
 奥の扉が自動で開き、入るように促される。
 拒否権は、ない。
 
 
「あっ!」
 緑の悲鳴と氷河の舌打ちがほぼ同時に聞こえた。
 真っ白なセラミックのような部屋に閉じ込められ、四方八方からの火炎放射、銃撃。
 狭い部屋なので、お互いの連携が取れていないとぶつかってしまい共倒れになる。
 氷河と緑が接触し、咄嗟に氷河が緑を庇って肌を炙られた。
「氷河!」
 みるみるうちにどす黒くなる肌に焦る。体温が限りなく低い氷河は、火が駄目だ。
 今すぐにでも駆け付けたいが、どこから狙撃されるか分からないため迂闊に動けない。
「氷ちゃん、大丈夫?」
 いつの間にそんな呼び名に……と思うと同時に、氷河の火傷が綺麗に消えた。
2009/10/16/Fri
http://littlebird.wa-sanbon.com/

サイト作ったのです。
全ページ同じレイアウトというなんて不親切設計!!
迷子になりそうですが、タグ直打ちなんで……↓↓
2009/10/15/Thu
 井浦好きすぎて自給自足。
 え、と、おそるおそる投下……。

 


 すごい音がして、思わず雑誌を取り落とした。
 その空いた手で思わず隣の宮村の服を掴む。
 アイスコーナーの前で目をまん丸にしている緑の髪が見えた。
 閉めないとアイスが溶ける……などと考えてしまうのは、今の状況からの逃避だろう。
 人生で初めて、コンビニ強盗を見た。というか、正直に言おう、現在進行形で遭遇している。
 何だこれは。
 コンビニなんか襲っても大して金になりはしないだろうに。
 刃渡り20センチほどの包丁が鈍く光る。あんな普通の包丁に恐怖心を抱くなんて、小学校の調理実習の時以来だろう。
 その包丁を突きつけられた店員は泣きそうに顔を歪めている。アルバイトだろう、眼鏡をかけた顔は自分達とそう離れているとは思えないくらい幼い。
 そりゃそうか。
 強盗が2人もいたらそりゃ絶望的にもなるか。
 残念な事に、店内には俺たち3人と1人の店員しかいない。強盗は2人。二人とも刃物を持って顔を覆面で隠している。
 防御力、攻撃力共に負けだ。こりゃ抵抗するのは得策でない。
 と、思っていると強盗の1人が歩き出し、店の端にいた井浦の所に向かっていく。
「井……っ!」
 思わず声が出たが、店員を脅しつけレジの金を抜かせている奴に「黙れ!」と怒鳴られた。
 手のひらにじわりと嫌な汗をかいているのを自覚した。
 あいつは今(流石に)静かにしてたし、逆鱗に触れたっていうわけでもないよな?
 青い顔をした井浦の「え、何?」という声。
 びびりすぎて心臓が止まりそうだったが、ただ俺たちを一カ所に固めたかっただけのようで、ほどなくして包丁に煽られた井浦が転がるようにこちらに合流した時は掛け値なしにほっとした。
「石川~~~~」
 困ったように(というか問答無用で困ってるわけだが)眉をハの字にした井浦と、不機嫌そうにふてくされ顔の宮村(お前結構余裕あるな!)と一緒にレジカウンターの前に座らされた。
「財布」
 目の前で覆面の男が手を差し出してくる。左手には照明を反射する包丁。
「え~~~俺そんなに持ってないよ~……」
 ぶつぶつ言う井浦同様、抵抗する気にはなれず鞄に手を伸ばした瞬間、反対側から無理矢理その鞄を奪われた。
 至近距離に金物が見えて、思わずぞっとする。
「変な動きされたら困るだろ」
 もう1人が咎めるような声を出した。こっちが主犯格か。
 鞄を漁られている最中、嫌な事を思い出した。鞄の中には吉川からもらったクッキーが入ってる。
 どうもあの劇物を食べる気になれず言い訳して持ってきたものだが、実は俺は可愛らしくラッピングされたロシアンルーレットが結構嫌ではない。
 知らない男の手で無造作に投げ捨てられたクッキーが、音もなく転がる。
 それを一瞥もしないマスクの下に見える素顔はどうやらそこそこ若いようだ。
 思わずむっとした顔になった俺の視線を追い、覆面男がクッキーを視界に捉えた。
「へえ、えらく可愛いラッピングじゃねぇか」
 嫌な感じに背中がざわっとざわめいた。
 宮村と井浦も気づいたようで、あ、という顔になった。
「いっそアレ食べてもらった方がいいんじゃない?」
 こそっと井浦が囁いてきたので、とりあえず肘でそれなりに強く小突いて黙らせた。「げふっ」と聞こえた気がするが気のせいだ。
「しょーもない事にかかずらうな」
 片割れが苛立った声で制止するが、一足遅かったようだ。
 乾いた音が響き、ピンクのボックスがひしゃげた。
 時が止まったように感じた。
 腹の底でふつふつとわけの分からない怒りが渦巻く。今のこの理不尽な状況に対するものであり、吉川の思いを踏みつけられた事に対するものでもある。
「何すんだ!」
 思わず、声が出るくらいには腹が立った。
 宮村と井浦がぎょっとしてこちらを見る。
「石川っ」
 宮村が制止してくるが一度放った矢は戻らない。
 ぎらっと包丁が光り、思わず怯んだ。
「何だぁ? 好きな子からもらったとかか?」
 甘酸っぺぇーなどと馬鹿笑いをする姿を見て、隣の2人と店員がホッと肩をなで下ろした。
 何が起こったのか分からなかった。
 気づくと横っ飛びに張り倒されていた。
 耳元でがんがん音が響き、血相を変えた井浦がこちらを向いて何か叫んでいるが分からない。
 宮村を目で捜すものの、陰になっていて見えない。
 殴られた、と気づいたのは頬に鈍い痛みが来てからだ。口の中で鉄の味がする。
 殴られたくらいで良かったと思いの外冷静に考えていると、目の前の井浦が主犯格の男に引きずられるのが見えた。
 さっきとは比べものにならないくらいの嫌な予感。
「ちょっ、何?」
 真っ青になった井浦を一瞥し、男は視線をこちらに向けた。
「おれ、無意味に反抗されんのって嫌いなんだよな。何で抵抗しても無駄だってわかってんのに怒らせるようなことするんだ? 自分が殴られたり刺されたりするくらいじゃわかんないのかな」
 普通の声で言っているが、目が普通じゃない。
 掴んでいた井浦の襟首を急に離したかと思うと、バランスを取れずたたらを踏んだ彼の腹を前触れなしに蹴り上げた。
 息が詰まった。
「何すんだ!!」
 咳き込みながら崩れ落ちた姿に心臓が破れそうになる。
「うるせぇ」
 バンという重たい音と、井浦の短い悲鳴。
 そのまま2,3度立て続けに重い蹴りが彼の背中や腹を襲う。
「あーあ、馬鹿なお友達のせいで痛いよねー可哀相」
 呻き声を上げながら蹲る背中に、さらに。
 俺はと言えばやめろとか離れろとか叫んで、必死の形相をした宮村に押さえつけられていた。
 仲間の強盗もドン引きしているようで、誰もその場から動けないまま一方的な暴力がしばらく続く。
 腰、太もも、肩、頭、背中。
 ぶつぶつ呟く声と、まるで踏みつけるように脚を振り下ろす鈍い音。
 押しつぶされた肺から鋭く漏れる息。
 包丁がぎらぎらと光り、まさにあれが悪いのだと言わんばかりに宮村が包丁を睨め付ける。
 呻き声すら聞こえなくなった頃、始まった時と同じように突然止まった。
「時間かかりすぎた。逃げよう」
 そう言うが早いが、金の入った袋を担ぎ、強盗二人組は外に出てってしまった。
 しばらくしてから響くパトカーのサイレンにやっと我に返り、大慌てで井浦に駆け寄った。



ぼこり愛。
2009/10/14/Wed
 ほどなくして、シャワーの音が聞こえてきた。
 えらい勢いなのでもしかしたら水でも浴びてるのかも知れない。
 俺は俺で、ぐちゃぐちゃになったシーツを丸めながら「今夜はここで寝られないな……」と思っていた。
 換気のために窓を開けようと苦戦していると、音がして氷河が出てくる気配がした。
 振り向けない。
 俯きながら窓と戦っていると、気配は真後ろに来た。何か言えよ。気まずいだろ。
「これ嵌め殺しじゃないの?」
 普通だ。普通の声だ。
「いや、でも鍵ついてたし……」
 それに比べて思いっきり動揺した声が出た。くそ。
 ひょいと肩越しに白い腕が伸びる。くっきりついたベルトの痕が視界に入り、思わず目を逸らす。
「あ、ほんとだ、鍵ついてる」
 固まってる俺に気がつかないフリをし、窓をあっさりと開けた氷河はそのままあっさりと踵を返した。
 ひんやりとした空気が離れ、強ばっていた肩から力が抜けた。
 そのまま1分ほどお互い無言。氷河が何をしてるかとかもう気配を探る気にもなれない。
「気まずいから帰りたいんだけど」
 あんまりな言葉きた!!
 反射的に振り返ると、唯一のナイトウェアを着込んでいる氷河がふてくされてベッドの端っこに腰掛けていた。
「帰りたいんだけど服とパンツがない」
 に、睨まれた。
 怒ってるじゃねぇか。
 俺の脱いで渡すか……とまで思い詰めていると、空気がふと軽くなった。
 氷河が困ったように笑っている。
「さっきのあれ、気にしなくていいから」
 ぶつけられた言葉に、掛け値なしに心臓が跳ね上がった。
 頭ががんがんする。
「雷が大地兄の事好きなのはずっと分かってたし、零の事で苦しんでるのも知ってた」
 あっちを向きながら訥々としゃべる氷河。一切こっちを見ない。
「でもだからどうってわけじゃないから。ただ、俺はすごく嫌だったわけじゃないし、本当に嫌だったらなんとしてでも抵抗してるし、というか俺が雷好きだから雷もそういう方法に出たのかも知れないから雷のせいじゃないし……雷が気に病むような事じゃないから。忘れて」
 あれ、何で俺ショック受けてんだ。
 こんなに長文を、しかも考え考えしゃべる氷河なんか珍しくて(というか絶滅危惧種? くらい見たことない)、俺の為にこんなにしゃべってくれる氷河にテンションあがらないはずないのに。
 何でこんなショック受けてんだ?
「忘れて」
 きっぱりとした瞳で見据えられ、何も言えなくなる。
 忘れる?
 忘れたことにして、普通に今まで通り氷河とみんなと楽しく生活する?
 忘れられる?
 ちゃんと忘れたふりできる?
「できない」
「雷のせいじゃないから」
「できない」
「むしろこういう状態かもって思いながら来ちゃった俺が悪いし」
「できない」
「まだホルモン安定してないんでしょう?」
「できない」
「大地兄に振られたばっかで気持ち落ち着いてなかったし」
「できない」
 業を煮やし、氷河が怒った声で、でも泣きそうな顔で、哀願するように言った。
「忘れて」
 氷のような瞳で睨まれ、焦燥だけ募る。
「嫌だ」
 泣きそうな声が出た。
 そんな自分の声にびっくりして、でも言葉は止まらない。
「嫌だ。俺が氷河の事すっごい傷つけたのに、俺だけ忘れるの? 氷河は絶対忘れないでしょ、絶対」
 しゃべりながら、あれ、と思った。
「俺、おれすごい後悔して……氷河が話しかけてくれてすっごいほっとしたんだよ」
 胸の中に迫る、すさまじい後悔の風。
「もう元の関係には戻れないって思って、それで」
 ああ、そうか。
「まだ、まだ失恋したばっかりだからわかんないけど、でも、氷河が待っててくれるなら……」
 私は氷河と新しい関係を作りたい。
 ひんやりとした体温を感じた途端、堰を切ったように泣き出してしまった。
 
 
「だからーーーーーーー!! 嫌だっつってんだろうが!!」
 滅多に表情の崩れない氷河が必死で逃げている。
「お願い、ね、お願い!」
「しつけぇ! っていうかその必死さが怖ぇ!」
 その様子をぽかんと見つめている炎、大地、零の二人。
「最近あの二人、何か変わったね」
 零が苦笑混じりに呟く。同感、というように頷く男二人。
「でもいいんじゃないのかな」
 炎が含みのある視線を大地に向け、気づいた大地がさり気なく視線を逸らした。
「で、あの二人は何をもめてるの?」
「さあ」「さあ?」
 でもまあ、
「楽しそうだからいいか」




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まゆゆ
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 女性向け小説を書きたい!
 
 そういう意味わからん情熱が突っ走った結果のブログです。

 愛はあふれてますが、時たまわかりにくいです。
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