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色々
2025/02/03/Mon
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2009/12/17/Thu
「待って、氷河、待って」
 氷河を必死で追いかけるが、その背中はどんどん遠ざかっていく。
 指先は僅かも触れることなく、その身体は扉の中に消えてしまった。
 一瞬たりとも振り向かないその顔がどんな表情かは想像するしかないが、ピンと伸びた背中が痛々しかった。
「氷河、氷河、開けて」
 刺激してしまわないように、そっと扉に手の平を添える。
 部屋の中でひっそりと息を潜めてしまっている氷河に届くように、精一杯の思いを込めて必死で名前を呼ぶ。
 今私が氷河に許される為に出来ることはそれくらいで。
「氷河、氷河、ひょーが、ひょーがぁ……」
 何度も何度も呼んでいると、瞳が熱くなってきた。
 ああ、私は何でこうなんだ。
 氷河に酷いことをしてとことん傷つけて、氷河はただじっと耐えて、耐えられなくなった氷河はそれでも私を責めず自分の中に流れ出る血を閉じ込めようとして。
 そして私はまた自分勝手に振る舞いそれを破裂させ、溢れ出した血のあまりの多さに怖じ気づく。
 あまりの恥ずかしさに謝ることすらできない。
 舌が凍ってしまったように動かない。名前すら呼べない。
 呼ぶ資格ない。
 どうしよう。
 このまま終わってしまう。氷河はきっともう俺を許さない。
 冗談抜きで、冷水をぶちまけられたような気がした。
「…………ゆるして」
 口にしてしまった。
 言ってはいけないことを。
 嘲るようなタイミングで扉が開き、真正面には仮面のように無表情な氷河が立っていた。
 氷を張った湖のように何も写さない瞳に、その人形のような相貌に、息を飲む。
 この人は、こんなに美しいのに。私はこんなに汚い。
 だからかも知れない、私や炎が氷河を汚したいと思ってしまうのは。
 ふ、と氷河が微笑んだ。
 冷気は出していないはずなのに、両腕に鳥肌が立ち、ぶるっと震えた。
「こじ開ければいいだろう。いつもやってるみたいに、俺のことなんかお構いなく」
 悲しみと焦りのあまり眠っていたモノに、火がついたコトに気が付いた。
 震えの半分以上はきっと、歓びだ。
 暗い瞳をした氷河が嬉しいんだ。
「……ごめんなさい」
「次は泣き落としなんだな。そんなまどろっこしいことせずに、いつも通りやったら? もう抵抗するのも疲れた」
 視線を逸らしながら、吐き捨てるように言われる。
 その捨て鉢になった様子に、焦燥と歓喜がわき上がる。
 だけど、だけどやっぱり。
「あー、そういう氷河も捨てがたいけど、やっぱりいつもの氷河がスキかな」
 自分の思ってるのと寸分違わぬ事が聞こえた時は、何の事かと思った。
 穏やかな声が凍りそうな空気を溶かし、我知らず詰めていた息を吐いた。
「はいはい、兄弟げんかなのか痴話げんかなのか分かんないけど、とりあえず落ち着いて」
「うるさい」
「はいはい」
 唐突に大地が、氷河をぎゅっと抱きしめる。
「氷河」
 宥めるような低音に、まるで自分が抱きしめられているような錯覚に陥る。
「俺が話聞くから、頼むから、そんな酷いこと言わないで」
 氷河の表情にヒビが入る。
「うん、きっと氷河はいっぱい考え込んじゃったんだろうね。つらかったね」
「……」
 みるみるうちに瞳が潤む。
 大地に「あっちに行け」と手を振られるよりも一足早く、俺はその場から逃げ出していた。
 胸を焦がすのは焦燥と。
 
 とりあえず自室に逃げ込み、落ち着こうと普段は吸わない煙草に手を伸ばす。
 手が震えてマッチがうまく擦れない。
 やっと火を点し、最初は肺まで入れずに浅く吸う。
 様子を見ながら、咽せないようにゆっくりと深呼吸をする。
 緑の調合した薬草はすっと頭を冷やしてくれる。
 1本吸い終わる頃にはかなり冷静になっていた。
 
 ふわふわした雰囲気の大地が、穏やかな笑顔で氷河を抱きしめる。
 硬く閉ざしていた心が溶けるのが見えるようだった。
 氷河の瞳に張られた氷が蕩けたその瞬間、俺の頭を占めたのは僅かな焦燥と、すさまじい嫉妬だった。
 あのままあそこにいたら、思わず突き飛ばしてしまいそうだった。
 
 大地を突き飛ばして、氷河を奪い去りそうだった。
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2009/12/03/Thu
「炎、相手してよ。発情期なの」
 口に含んでいた飴が吹っ飛んだ。
 この人は正気なのかしら。おそるおそる振り向くと、獰猛な目をした金髪が仁王立ちしていた。
 やべえ超こえぇぇぇ。
 信じてもいない神様に祈りそうになりながら、ゆっくりと身体の向きを変え対峙する。
 こんなのに背後に立たれてたらヤバイ。
「……氷河はどうしたの?」
「誰かさんが余計な事吹き込んだせいでご無沙汰」
 紛う事なく濃厚な殺意を感じる。
 怖い。めちゃくちゃ怖い。
「もしかして、それって俺のせいだって言いたいの?」
 わざと嘲るように言うと、気に障ったのか眉がぎゅっと寄った。
 激情に耐えるように結ばれた唇。
「別にいいよ、相手するくらい。でも俺、痛いの嫌いだからなあ~」
 わざと軽く言いながら、手の甲で雷の頬を撫でる。
 それだけでわずかに震える身体は、確かに欲を欲しているのだろう。
 良かった、内心噛み付かれたらどうしようと思ってたんだ。
「しかも、挿れちゃ駄目なんでしょ? だったら俺あんま気持ちよくないし」
 そんな潤んだ瞳で睨まれても。本当に発情してんだな~……。
「……手でするから、ちゃんと炎も気持ちよくするから」
 声も必死だ。
「えー……雷の『気持ちよくする』って何か不穏なんだよね~。あの氷河なのに悲鳴とか泣き声しか聞こえてこないし」
 痛いところを突いたようで、俯いて黙り込んでしまう。
 指先が行き所をなくしたようにもぞもぞしている。
 虐めてる気になるけど、全部事実だし。俺は悪くない。
 それどころか、俺も雷と兄弟なんだなあと思うくらい嗜虐心が満たされる。
 もっと追い詰めたい。
「どーいう風にキモチヨクしてくれるわけ?? 具体的に説明してよ」
「だから……」
「俺、おっぱいそんなにスキじゃないんだよねー。雷のウリって胸の贅肉だけじゃん」
 みるみる顔が真っ赤になり、金魚のように口をぱくぱくさせた。
 髪が静電気を孕み、ふわりと浮き上がる。
 一瞬本気で逃走の算段をした瞬間、雷が俯いて深呼吸した。
「絶対ヤる気ないだろ」
 結構馬鹿じゃないんだよねー。
 にっこり、極上の笑顔を見せつけてみた。
「あ、バレた?」
 指先が放電し始めたのを見て急いで付け加える。
「でも、必死になってる雷をいじめるのって楽しいね。ちょっと勃ちそうだったもん」
「変態」
 一瞬浮かべた、本気の侮蔑の表情に煽られた。
 気が付くと、雷の髪を引っ張ってキスをしていた。
 身体を震わせた雷に気を良くし、そっと舌で唇をなぞる。
 何か、すごい嫌がらせだな、と苦笑を浮かべたと同時に不意を突かれた。
 するりと舌が口内に入り込んでくる。前歯の裏をねっとりと舐められ思わず腰が震える。
 うわ、何かむかつく。
 思わず本気になりかけたが、自分でも何が何だかわからないが雷を突き飛ばしていた。
 次の瞬間、ひやりとした空気を肌に感じ、頭を抱えたくなった。
 雷が手の甲で唇を拭いながら、思わず、といった様に視線を落とす。
 俺はというと、情けないことに振り向けない。
 滅多にかかない、汗というものが背中を滑り落ちる。
 お、俺悪くねーし! 誘ったのは雷だし!
 ……駄目だ、こんな事言ったら炎の氷漬けが完成してしまう。
 どうしよう。
 約1秒でここまで考え、何も思い浮かばないのでとりあえず土下座でもしようかと思い意を決して振り向き、決するんじゃなかったと心の底から後悔した。
 
「俺が誘ったんだ」
 ぽつんと雷が呟く。
 それから言葉が続かなくなり、俯く。
 俺はというと、そんな雷を目の端に捉えながらも氷河から視線を逸らすことが出来ず、固まってしまっていた。
 雷がまた何か言おうと口を開くが、それより早く氷河が言葉を発した。
「ごめん」
 あんな潤んだ声聞きたくなかった。
2009/11/15/Sun
 右腕が弾き飛ばされ、床にぶつかり重い音を立てる。
 痛みはないがひどく不快だ。
 暴発を避けるために、根本を切り離す。火花が散って嫌な音を立てた。
 5分ほどですでに息が上がってしまっている自分が情けないが、しょうがない。
 あーもう本当に何でこんなことになってるんだよ正直勘弁してくれよ死にたくねぇよ。
 ぐだぐだ考えている間にも、修羅場を叩き込まれた身体は流れるような動きで換えの銃身を取り出す。
 視野を補正する機能付きゴーグルと最近新しくしたばかりのスコープのお陰で、ある程度の速度の相手ならば苦にならない。
 それでも本気で狙わなければこちらがやられるということは重々承知しているが、手元が狂う。
 効果のない威嚇射撃にしかならず、照準の上にいた人物はあっさりと身を翻した。
 舌打ちをしながら腕を振ってリロードし、再び構えるもその頃には攻撃範囲内に取り込まれていた。
 このままだとやられる。
 咄嗟に腕で顔を庇うと、目の前の相手はあからさまに動揺した。
 その隙に隠していた右腕を突き出し、外しようのない距離で打ち放った。
 声もなく崩れ落ちた彼を抱き留め、あまりにも馬鹿馬鹿しくて思わず笑ってしまった。
2009/11/11/Wed
「この傷は誰のせいなの?」
 ソファの上に押し倒してマウントポジションを取ってから、顔の横を両腕で挟み込み、わざと体温を上げる。
 気丈にも睨み付けてくるが、こめかみに汗が流れているのを見逃さない。
 そうだよね、当たったらすごい火傷になっちゃうもんね。
「怖いよねーごめんねー。素直に吐いたらとっとと解放してやるけど?」
 蒼白になった氷河の顔色に、あ、こんな言い方したら素直に吐かないかー、と気づく。
「ねえ」
 わざと頬に触れようとすると、ビクッとして身を引く。
 前まではこんなことなかった。
 どんな状況下でも冷静に判断し、こちらの隙を突いて攻撃してくる奴だった。
 いや、今でもほとんど変わっていない。
 ただ、1点を除いては。
「別にお前に関係ないだろ」
 ブリザードのような、冷ややかな視線、声。
 いつも通りなのに、わずかに掠れてることに気が付く。
 この体勢が、怖いんだ。
「関係ない? へえ?」
 わざと嘲るように言い放ち、元の体温に戻した手で無理矢理腕を掴む。
 真っ白な腕に点々と残る、一目で噛まれたのだと分かる裂傷。
 所々赤黒くなっているのは殴られたのだろうか。
 電流でも浴びせられたのか、火傷のようになっている所もある。
 油断した瞬間を突かれ、重い蹴りが鳩尾に決まり息が詰まった。
 ソファから転げ落ちると同時に身を捻り、更に追い打ちをかけようとしていた蹴りを辛うじて避ける。
 目の前でビュンッと音がし、冷気が漂う。
 その速度もやや勢いが欠けている気がして、理由も分からず苛々する。
 わずかにたたらを踏んだ隙を見逃さず、勢い良く足払いをかけると再びソファに沈んだ。
 そのまま起き上がろうとするのを全体重かけて押さえつける。苦しそうな呻き声が聞こえたが気にしない。
 自分の体温に細心の注意を払いながら素手で肌に触れると、身体の下で必死で藻掻きだした。
 だが、そのままの勢いで上着を捲り上げると不意に力が抜けぱったり動きが止まった。
 真っ白な身体に散る、ひどい暴力を受けたとした言いようのない傷跡たち。
 火傷の跡でもあれば完璧なんだけどね。刺激された嗜虐心に気が付かぬフリをして、皮肉げに心の中で呟く。
「へえ、ひょーがってこんなのスキなんだぁ。意外!」
 動きを止めた氷河の耳元で嘲るように囁くと、真っ赤に染まった目元で睨み付けてきた。
 わざと上から見下ろし、ニヤニヤしてやると泣きそうな顔をして目を伏せる。
「……っ」
 小さな声で何か言い返してきたが、掠れてしまってここまで届かない。
「ねえ、言っちゃったら? 楽になるんじゃない?」
 思いの外真剣な声になった。しまった。
 訝しげな顔をした氷河と目が合う。
 あんなに強かったのに、あんなに俺の事負かしてきたのに、たかだか1人の人間に壊される?
 あんなに高潔な氷河が?
 あんなにプライドの高い氷河が?
 壊れる?
 許さない。
 壊されることを受け入れようとしている氷河だって、許さない。
「言えよ」
 感情に伴って体温も高くなり、喉で悲鳴を押し殺した氷河が身を捩る。
 どこかそれも色めいて見えた。
「そんな風に誘ってるのは誰なの?」
 一瞬きょとんとした後、蔑むような目になった。
「そういう発想しかできねぇのか」
 吐き捨てる声は、それでも少し震えていた。
「誰なの? ねえ、言っちゃいなよ、苦しいって」
 瞠目する無防備な氷河。初めて見た。
 まあ氷河も俺に劣らずびっくりしてるみたいだけど。
「苦しいんでしょう? たまに悲鳴が僕の部屋にまで聞こえてきてるよ? あれは素直に悦んでる悲鳴じゃない。それぐらい分かる。何で許すの? 何で何も言わないの? 何で壊されようとするの? このままだったら本当に壊れるよ? 戻れなくなるよ?」
 我知らず肩に食い込ませてしまっていた指を外される。目は逸らされたまま。
 どうすれば届くんだ?
 どうすればこの強固な壁を壊せるんだ?
2009/11/10/Tue
 突然全ての動きを止められた。
 俺はまだ、イッてない。
 悲しさと怒りとそのたぐちゃぐちゃした感情で、何もリアクションが取れない。
 ただ深く息を吸って、吐いてを繰り返していると、雷の身体が少しだけ離れた。
「いかせてほしい?」
 意地でも言わない。
 ぷいっと顔を背けると、殺気に近いオーラが至近距離から発せられた。
 先端に指をあてられ、小刻みに電流を叩き込まれる。
 その度に跳ねる身体と、押さえられずに溢れる悲壮な悲鳴。
 じりっとした痛みに目を見張ると、二の腕に噛み付かれていた。
 反射的に空気に冷たい物が混じったが、叩き込まれる電流の痛みに近い快感で霧散する。
 真っ赤な歯形が倒錯的で眩暈がする。
「いきたい?」
 何でそんな泣きそうな声で懇願するの。
 ぎゅっと目をつぶって、意地でも顔を見ないようにする。
 電流がまた、奥まで達する。
 無意識に腰を浮き上げてしまい、快感を意識しないように、自分の痴態を考えないようにするのに必死だ。
 悲鳴はどうしようもなく止まらないから、引き寄せた自分の腕に噛み付いた。
 ぎちぎちと音が鳴り、鉄の味が広がる。
「何やってんだ!」
 突然、烈火の如く怒りだした雷に頬を張られた。
 ようだ。
 わけがわからない内に目の前が真っ白になり、身体が痙攣する。
「あ、いっちゃった」
 張られた拍子に電流も強くなり、臨界点を越えてしまったようだ。
 気づくと、情事の後の呼吸は激しい嗚咽になり、自分でも止められない。
 泣きながらふと目を上げると、姿見に自分の姿が映っていた。
 わずかに乱れた服装の雷と、半裸に近い格好の自分。
 胃液がのど元まで這い上がってき、堪らずその場で嘔吐した。
 急速に意識を失って崩れ落ちながら、この後俺たちの関係どうなるのかな、なんて考えていた。




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 そういう意味わからん情熱が突っ走った結果のブログです。

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