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色々
2025/02/02/Sun
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2011/05/11/Wed
「でも私は氷河が好きなんだ」
 水が溢れそうなコップにピンク色の花びらをそっと浮かべるように、零れそうな涙を自分の中にぎゅっと押し戻すように、たんぽぽの綿毛がをふっと吹くように、慎重に紡ぎ出す。
 届いて。あなたの扉に触れるだけでもいい。
「今までは、触ってるだけで満足だったけど、でも、この前のことでそうじゃないってわかった」
 手を伸ばせば届く距離の氷河の背中を見詰めながら、拳を握る。決して手は伸ばさない。
 もう言葉も思い浮かばない。
 どうしようかと必死で探していると、不意に氷河が口を開いた。
 僅かに半身になった肩越しに、強ばった表情が見える。
「ホルモンが安定してないなんか言い訳だ」
 言葉が刃になり、ばっさり斬られる。
 元々切れ長な目を更に鋭くし、氷河は言い募る。
「ただ単にワガママなだけ。自分で自分を律せないだけ。中途半端に強い力持っちゃってるものだからそのワガママを増長し続けた結果だ今の状況は」
 俺は、雷を、信用できない。
 言外に伝えられた言葉は正確に音となりこの耳朶を打つ。身体が我知らず震え、目が自然と伏せようとする。駄目だ、氷河から目を逸らしちゃ駄目だ。
 自分自身に鞭を打ち、必死で顔を上げる。今まで氷河は私から逃げなかった。だから私も逃げちゃ負けだ。
「自分の思い通りに行かないとすぐ力で解決しようとするし、すぐ焼き餅焼いた挙げ句報復がえげつねぇし、すぐ発情して盛るわ、正直、『今日はなにされるのか』って怖ぇよ」
 淡々とした言葉は思ったより私を傷つけない。
 
「だけど」
 
 そんな潤んだ瞳で罵られたって怖くない。
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2011/02/21/Mon

「老いらくの恋に付き合ってくれて、ありがとう」
 
 ありがとうは、こちらの台詞だ。
 
「もう君は自由だからね」
 
 いつだって私は自由だった。
 
「とても楽しかったよ」
 
 そんな“楽しかった”なんて一言ではくくれないくらい、貴方にはたくさんの物をもらった。

 私が想像していたよりも、ずっとずっと激しく穏やかで、甘くてほろ苦い恋。
 こんな気持ちをくれた貴方に、私は何て言えばいい?
 
 貴方の手を握る。乾いた手の平はそれでも、あたたかい。
 私の手は冷たくないだろうか。
 
 
 
 ずっと、恋なんて出来ないと思っていた。
 一人が好きだった。
 人は好きだけど、賑やかな所から一人の部屋に帰るとほっとした。
 それが貴方と出会ってから、一人の部屋がイヤになった。
 貴方の為に可愛い私でありたいと思った。
 貴方に釣り合うような、きちんとした私でいたいと思った。
 貴方からの電話に跳ねる鼓動。ほのかに暖かくなる胸と相反して酷く緊張する。
 
 こんな思い知らなかった。
 貴方がいるだけで本当に本当に嬉しくて涙が出そうになる。
 そして今、貴方を失う事がこんなに恐ろしい。
 
 だけど、貴方と出会った事を悔いはしない。
 こんな素敵な気持ちになれた事を、くれた貴方を。

2011/02/09/Wed
 こんにちは。ご旅行ですか?
 ……そうですか、楽しんで下さいね。わたくしも昔訪れた事がありますが、とても素晴らしい土地でしたよ。
 特に、名物のミートパイはお嫌いでなければ是非召し上がってみて下さい。絶対に後悔はさせませんよ。
 ええ、サクサクしたパイを切り分けると中からじゅわっと熱々の挽肉が……ああ、お腹が空いてきました。

 
 わたくしですか?
 わたくしは気ままな一人旅でございます。
 仲の良い従妹が結婚して引っ越すことになりましたので、この際なので休暇を頂いて観光がてら。
 まあ、そうですね、そこそこ大きなお屋敷でそこそこの地位で働かせて頂いている、とだけお伝えしておきましょうか。
 
2011/01/20/Thu
「おはよ!」
「ごめんね、お待たせ」
 にっこり笑顔の君に、思わずほっこり。朝の10時半。
「前売り券、もう引き替えといたよ。真ん中の方でいいよね?」
 君の望むことなら何なりと。
 みたいみたいと言っていた映画。可愛らしい古いロボットが、最新型のロボットの為に一生懸命頑張る話らしい。君の説明は相変わらずわかりにくいけど、テレビでCMをよく見て事前知識は付いた。
 うん、誰かが死んじゃったりする悲しい話じゃなさそうだから大丈夫。
 座席に座っても君はなかなか落ち着かない。
「ねーね-、小腹が空いたらお腹が鳴ってしまって困るから、ポップコーンとジュースも必需品じゃない?」
 はいはい、買ってきますよー。
「何味がいい?」
 素直に笑いかけたつもりなのだが、「何で苦笑するのー」と言われてしまった。
 それ、自分の胸に手を当てて考えてごらんよ……多分思い過ごしだよ。
 君はひそひそ声でよくしゃべった。
 特報を見ては次はこれをみたいあれをみたい。面白そう面白くなさそう。この俳優が格好いい、この女優は美人だ。
 そして本編が始まったら子どもみたいに一生懸命画面を見詰め、大口を開けて笑い、ボロボロ泣いた。ロボットが本来の彼(彼女?)らしさを取り戻した感動的な場面では、泣きながらにやにや笑っていた。
 正直、映画よりも隣に座る君のリアクションの方が楽しかった。
 ポップコーンを食べようとして手が触れてしまい、その瞬間だけ映画からこちらに意識が向く君も可愛い。まあ感動的なシーンではポップコーンどころじゃなかったみたいだけど。
 エンドクレジットが終わり場内が明るくなっても、君は真っ赤になった鼻をすすりながら鏡を睨み、はげてしまった化粧と格闘していた。
「化粧室に行けばいいのに」
「絶対混んでるもん」
 こちらに顔を見せないっていうことは、一応気を遣って貰ってるのかな??
 鷲掴みしてバリバリポップコーンを食べていると、ぱちんと軽快な音がして、君がごそごそ上着を羽織り始めた。
「お腹空いちゃった」
 フリーダムで良いと思う。
 
 
 食事は同じ館内にある、カツで有名なお店にした。
 メニューを、さっきの映画を見ているときと同じくらいの真剣さで見詰め、何だかんだいいながら4種類のカツが食べられるセットメニューに決めた君。そんな君を見届けてから、最後の最後まで君が悩んでいた、季節の牡蠣フライが入ったメニューに決めた。
「いっこちょうだい?」
「はいはい」
 やったーとわかりやすく喜び、お茶を飲みながらわくわく到着を待つ。本当、見ていて飽きない。
「お待たせ致しました、花御前のお客様」
「はぁい」
 わくわくしながらも、ちゃんと二人分揃うまで待ってくれる。こういった少し割高なお店はそこら辺きちっとしているので、ほとんど間を置かず牡蠣フライもきた。
 早速「いただきまーす」と届いたカツを頬張り、喜色満面! といった様子だ。
 柚のドレッシングが君の手の向こう側に見えたので、取って貰う。君も興味を示し、まずは少しだけキャベツの山にたらしてみる。
 ちょっと斜め上を見ながらもぐもぐと顎を動かし、何かに納得したように残りの山にもドレッシングをぶちまけた。
 わかりやすすぎる行動に笑いの衝動が破裂しそうだったが、幸せそうな君の邪魔をするのも忍びないので、腹筋に力を込めて耐える。耐えてくれ、腹筋。
「私、冷たい野菜ってそんなに好きじゃないけどこれなら食べられるかも~」
 それは本当に良かった。
 
 
 お会計の時にやや揉めしたものの、そう言うことを好まない君のお陰でこちらが負担することに成功した。
 引き下がった後、にっこり「ゴチソウサマでした」。好感度はうなぎ登りだ。
 が、転んではタダでは起きない君のことを忘れていた。
「お買い物したい」
 というお姫様に付き合い歩いていると、君がカラフルな看板を指さし「アイス~」の一言。ついでに満面の笑みも忘れずに。
 ……まだ食べるの……。
 ここは私が払う! という君の押しに負け、クッキーやらナッツやら何だかんだ入った華やかなアイスを頼む。
 カップにしてもらってふと横を見ると、キラキラした瞳で何故かチョコレートミントのみでトリプルコーンを注文している君の姿が目に入った。店員さんの何か言いたげな表情にちょっと同情した後は、笑いの発作を治めるのに苦心した。
2010/12/22/Wed
 過去のせいであっちこっちに因縁があるのはアイツだ。
 油断したのは俺だ。


 俺に恨みのあるものと、アイツに因縁があるものがタッグを組んだ。それだけだ。
 普段なら何事もなく倒せた相手のはずが、俺のおごりのせいで厄介なことになった。
 
 アイツが、超俺好みの美少女に変化して、半裸で俺の上に跨っている。
 
 普段のアイツは男の俺でも惚れ惚れするほど美しい姿をしている。それもそのはず、九本の尾を持つ賢しい狐が何百年もの時を経て変化した姿がアイツだ。
 元々は雌雄を持たず(どちらかと言えば乙女の姿が多かったようだが)人を誑かしてその精気を奪う狐の妖怪。
 精気を奪う。
 
 そこに目を付けられた。
 
 
「ほらほら、早くしてあげれば? 苦しそうだよ、彼」
 キンキン甲高い声が馬鹿にしたように急かす。
 声だけが部屋全体に反響し、姿はどこにも見えない。
 俺はコンクリート打ちっ放しの壁に鎖で繋がれ、アイツは狐を封じる為の護符張り巡らされた部屋では迂闊に動けない。
 俺の口やら首筋やらにキスをしていた美少女はその声に打たれたように顔を上げ、唇を噛んで僅かに顔を伏せた。あまりにも可憐な仕草は、普段の偉そうでほとんど笑わない絶対零度のクールビューティなアイツがこの美少女だと言うことを否応なしに忘れさせる。
 脳味噌が沸騰しそうだ。手足を拘束された状態では何もできず為すがままだ。
「何イヤがってんのさ、今まで何百人もの男を銜え込んできたくせにさ」
 せせら笑う姿の見えない相手に、殺意と同時に焦りが芽生える。
 これ、この状況を打破出来なかったらどうなるんだ。
 こいつどこまでいくんだ。
 急かされ、その綺麗なほっそりとした右手が俺のジッパーを下げる。俺のモノは正直で、結構勢い良く飛び出してしまった。あまりの恥ずかしさに悶絶しそうになるが、頬どころか首まで真っ赤に染めた美少女に臨界点が突破しそうになる。
 恐る恐る、ボクサーパンツからその指先で俺のモノを取り出す。
 息を呑んだ俺の焦りが伝わったのか、目の前の美少女が目を上げた。
 俺好みの少し寂しそうな瞳が俺を捕らえた。
 その右手には俺のモノが握られたままで……
 こんな場合だと言うのに、胸が高鳴った。ついでに下半身がもう大ピンチだ。九尾の狐、恐るべし。
「大丈夫」
 ふわり、としか形容のしようがない微笑。ああ、本当に、狐め。
「私にはなんてことないことだから。私に任せて」
 気丈にもそう言いきった、としか表現のしようがない表情。これ本当にアイツか。
 その後に来た快感は、今まで経験したことがなかった。
 口、とか、手、とか、脚、とか……。
 柔らかい女体が的確に快感のツボを刺激し、恥じらうようなそれでいて匂い立つような媚態で俺の視覚を犯す。
 少女の甘い香りが鼻腔をくすぐり、この腕を拘束する鎖が例え今外れたとしても、姿の見えない相手よりも目の前のこの美少女を啼かせる事になってしまうだろう。
「アハハハ! 本当に淫乱な狐だよね!」
 嘲笑う声も遠くなっていく。目の前の快感に意識が集中する。
 彼女のピンク色の下が醜い俺の怒張に這わされる。白い指が限界を促すように動きを速くする。
「は、はやく……」
 潤んだ瞳で見つめられた瞬間、弾けた。
 白濁した粘性の例の液体が彼女の顔にぶちまけられる。
 喉に入ったのかケホケホ咽せる姿を見て、ザッと血の気が引いた。
 いつものソロ活動でも、知り合いなど近しい女性を対象にしてしまった後は凄まじい罪悪感が押し寄せるものだ。今回は尚悪い。例え美少女の見た目であろうが、第三者が居る中で親友だと思っている男の手技でイかされてしまった。
 消えてしまいたい。
 だがそんな思いは、美少女の瞳にあの常に沈着冷静絶対零度の鋭さが見えた瞬間霧散する。
 個人的な感傷は後だ。
「どこまですればデバガメさんはご満足なのかしら」
 俺好みの可愛らしい、それでいて芯の強そうな声でどこへともなく問いかける。
 呼吸を整えながら意識を澄ます。何だか急に神経が鋭敏になったような気がする。
「何言ってるの、今から本番だろ」
 やや苛ついた声が、さっきまでは広がって聞こえていたのに今は方向が特定できた。
 僥倖。
 もっとしゃべらせて欲しくて美少女の姿をした親友を見ると、意図をきちんと受け取ったようだ。
「私としては、見られながらするのは全く興味がないんだけど」
 俺だってイく瞬間の無防備なところ誰にも見られたくねえよ死にたい。
「興味があろうとなかろうと、さっさとハメろよ淫売。さっさとそいつの精気吸い取ってしまえ」
 
 特定できた。




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